2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧
この話はKさんから聞いた話。 Kさんの家は、曾祖父が自らの手で建てたという築百年近い古民家だった。 土間のある広い玄関、太い梁、そして重たい引き戸。 その家には、古くからの「言い伝え」がひとつだけあったという。 土間の下は絶対に掘り返すな。 言い…
仕事帰りのMさんが、駅の立体駐輪場に自転車を取りに行った時の事。 時間は深夜0時前。 駅はもう人通りもほとんどなく、遠くを歩いてる人の音が聞こえる程だった。 2階建ての駐輪場は鉄骨の柱が無機質に並び、辺りには誰の姿もなかった。 いつもと同じように…
深夜一時過ぎ。 駅前のコンビニでバイトを終えたTさんは、気まぐれに駅の裏手に回ってみた。 人通りのないその裏路地は街灯も少なく暗い。 ふと視線を落とすと、路面の隙間に古びた階段が口を開けている。 「こんなのあったか?」何度か通った道のはずなのに…
深夜2時をまわった頃の事。 配送ドライバーのMさんは、翌朝の納品に備え、山間部を抜けるルートを走っていた。 峠道は街灯もほとんどなく、外はまるで墨を流したような闇。 けれど仕事に慣れたMさんは、ラジオを流しながら淡々と走っていた。 そのとき、カー…
写真が趣味のYさんは、ある週末、仲間とのキャンプのついでに一人でカメラを持って近くの沢に向かった。 地元ではあまり知られていない、観光案内にも載っていない場所だったが、前夜に話を聞いた年配の管理人が「水の流れが綺麗」と言っていたのを思い出し…
Kさんは一人旅が趣味だった。 人混みを避け、ふと目に留まった古びた旅館のホームページを頼りに、車で山道を登った。 着いたのは、周囲を杉林に囲まれた旅館。 木造三階建てで、表には「創業明治二十年」の看板が色褪せて掲げられていた。 受付で出迎えたの…
Tさんから聞いた話。 大学の休暇を利用して、朝早くに登山に出かけたTさんたち四人のグループ。 地図とコンパスを頼りに整備された登山道を歩いていたが、途中で道を一つ間違えた。 スマホの電波は既に届かず、地図にも載っていない小道に入り込んでしまった…
林業の現場で長年働いていた、Sさんが体験したという話。 ある年の晩秋、Sさんは奥山の斜面で、数人の作業員と一緒に間伐作業をしていた。 山道はぬかるみ、霧も立ち込めていたが、無線機を頼りに連携しながら作業は進んでいた。 その日、Sさんの腰にぶら下…
MさんがまだIT企業に勤めていた頃の話。 その日は大規模な障害対応で、終電間際まで一人オフィスに残っていた。 Mさんが働いていたのは、都心にある築30年のオフィスビルの5階だった。 普段は賑やかなフロアも、夜になると照明が落とされ、外の灯りだけがぼ…
介護施設で夜勤を終えた早朝、Yさんは車で自宅に向かっていた。 眠気のせいでまぶたが重く、ナビの音もぼんやりとしか頭に入ってこなかった。 次第に記憶が曖昧になり、気づいたときには見覚えのない小道を走っていた。 舗装はされているが道幅は狭く、両側…
営業帰りのTさんは、終電間近の車内でついウトウトしていた。 疲れ切った身体がシートに沈み、気がつけば聞き慣れないアナウンスが聞こえた。 「━━まもなく、〇〇駅、〇〇駅です」 何と言ったのかよく聞き取れなかった。 寝過ごしたのかと思い慌てて立ち上が…
建設会社で働くSさんは、夜の現場作業を終えた帰り道、唐突にラーメンが食べたくなった。 時計を見ると午前1時をまわっていた。 普段ならまっすぐ帰宅する時間だが、その夜は空腹が勝っていた。 車を運転しながら見慣れぬ路地にハンドルを切った。 住宅街の…
Yさんが小学生の頃に通っていた学習塾の話。 その塾は商店街のはずれの、古い雑居ビルの4階にあった。 エレベーターは使えず、いつも階段で上り下りしていた。 ビルの階段は、鉄の手すりがついたコンクリート打ちっぱなしで、3階と4階の間の踊り場だけがなぜ…
高校生のTさんには、帰り道にどうしても気が進まない場所があった。 駅から少し離れた古い踏切━━線路の両側はくすんだ雑草が生い茂り、夜ともなれば灯りも乏しく人通りもほとんどない。 別に誰かが亡くなった場所というわけでもない。 ただTさんは小学生の頃…
ネットで知り合ったRさんが、中学生だった時に体験した話。 Rさんは夜の21時過ぎ、小さな学習塾の入り口を出た。 雨がしとしと降っていて、空気はどこか重たかった。 周囲の民家はすでに灯りを落とし、通りも人けがない。 いつもなら同じ中学生たちが数人、…
これはSさんが中学時代の話。 Sさんが通っていた中学校の近くには、ちょっと変わったものがあった。 それは道沿いの民家の塀の脇に、なぜか姿見が立てかけられていたのだ。 全身が映るほどの大きな鏡。 縁は古く傷だらけで少し傾いているが、それでも人が通…
Aさんという人から聞いた話。 Aさんの勤務する会社は、駅近の古いビルに入っている。 築年数は数十年は経っているが、内装はリノベーションされていて、働いていてとくに問題はなかった。 ただ一つ、社員の間で「ちょっと気味が悪い」と噂されていたのが、フ…
Yさんは都内の大型テナントビルに入居する企業で、総務を担当していた。 その日は決算前の資料整理で、22時をまわってもフロアに残っているのはYさんひとり。 オフィス内は照明を落とし、足元灯だけが点いた半分暗がりの状態だった。 コーヒーを飲みすぎたせ…
Mさんというフリーランスの映像編集者から聞いた話。 その日は仕事部屋にこもり、日々クライアントから送られてくる動画データと向き合っていた。 手がけていたのは小劇団のプロモーション映像だった。 劇団名は「深縁座(しんえんざ)」。 都内の小さな劇場…
Tさんは都内の編集プロダクションで働く若手社員。 雑誌の特集記事が立て込んでいたその週、彼は連日、終電ギリギリまで会社に残ることが多かった。 金曜の夜、その日も昼からずっとパソコンとにらめっこしていたTさんは、資料の校正とレイアウト調整に追わ…
Cさんがそのキャンプ場を訪れたのは、ちょうど夏が終わる頃だった。 人里から離れた山あいにあるその場所は、シーズンが過ぎると人もまばらで、静かに過ごしたいソロキャンパーには好まれるという。 管理棟も午後5時には閉まり、夜は完全に無人になるのが常…
Rさんたちは、大学時代の友人同士で計画した夏の小旅行で、山奥のキャンプ場にある古びたバンガローを借りた。 森に囲まれたその場所は街からも遠く、電波もほとんど入らない。 だが静かさを楽しむにはちょうど良かった。 建物は木造で玄関の引き戸がきしむ…
ソロキャンプが趣味のYさんは、週末になると人の少ない山奥に分け入って、一人で自然の中に身を置くことを楽しみにしていた。 その日も、地図にも載っていないような旧道を進んだ先の、廃れた林道脇の空き地にテントを張った。 標高も高く携帯の電波は届かな…
Mさんたちが大学のゼミ仲間と訪れたキャンプ場は、県境の森の中にあった。 宿泊は古びたバンガローだったが、簡易シャワーや炊事場もあり、学生たちには十分だったという。 夜になってバンガローの横で焚き火を囲んだ。 火を見ながら語る他愛ない話や、持ち…
Kさんが大学の友人たちとキャンプに出かけたのは、ちょうど夏休みの終わり頃だった。 場所は県内の山間にあるキャンプ場で、水道や簡易シャワーはあるものの、建物らしい建物は管理棟と仮設トイレくらいしかないような場所だった。 夜は焚き火を囲んでくだら…
地元の山岳会に所属しているという60代のSさんが、ある秋の日に体験したという話。 その日、Sさんは県内でも特に整備が行き届いたと評判の登山道を、ひとりで登っていた。 紅葉の見ごろには少し早かったが、涼しい風が吹いていて、歩くにはちょうどよい天気…
これは長年山岳ガイドを務めるという、Kさんから聞いた話。 標高二千メートルを越える某山系で、ルート調査と称して単独行動をとっていたときのことだった。 その地域には、遭難者や登山客の緊急避難用として建てられた、古びた無人の山小屋がいくつか点在し…
ネットで知り合ったMさんから聞いた話。 それは友人たちと出かけた、山間のキャンプ場で起こったという。 その場所は県境近くの標高の高いエリアにあり、近年できたばかりの簡易キャンプ場だった。 トイレは仮設の青い簡易型。 だが最低限の設備はあり、敷地…
Mさんが体験した話。 それは大学時代の夏休みのこと。 地元に戻ってきたMさんは中学時代の友人たちと集まり、夜にある場所へ向かった。 行き先は彼らが通っていた中学校。 数年前に統合で廃校になり、今は雑草と落書きに覆われた無人の建物だった。 「懐か…
この話は、林業歴三十年以上のTさんから聞いた話。 その日もTさんは、三人組である区域の境界に近い尾根に入っていた。 午前中はチェーンソーの音が響いていたが、午後になると皆バラバラに位置取りして、間伐作業に入っていたという。 喉が乾いたTさんは…