2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧
Rさんは高原の見晴らしのいい場所で、双眼鏡を使って遠くの尾根を眺めていた。 登山の途中、休憩がてら対岸の山並みを観察するのが好きだった。 空は晴れていた。 風も穏やかで、双眼鏡のレンズ越しには緑が鮮やかに広がっていた。 と、そのとき、向こうの尾…
Bさんは、ひとりで山を歩くのが好きな人だった。 派手な山よりも、静かで人の少ない登山道を選ぶ。 その日もあまり利用者のいない山道をゆっくり登っていた。 途中でやや広くなった場所に出た。 斜面を越えた先に、一本の太い倒木が横たわっていた。 倒れて…
Nさんは登山歴十数年のベテランだった。 地図に載らない旧道や廃尾根を歩くのが趣味で、この日も一人、誰も通らない尾根道を辿っていた。 高度はさほどではないが踏み跡も薄く、地形図とコンパスを頼りに慎重に進むルートだった。 昼を過ぎた頃、尾根がゆる…
Gさんは一人で山に登るのが趣味だった。 その日も県境に近い、あまり知られていない低山を選び、静かな登山道をのんびりと歩いていた。 昼を少し過ぎた頃、登山道の脇に妙なものが目に入った。 平べったい石が等間隔に並んでいる。 ひとつひとつは手のひらよ…
Fさんたちは、大学の山岳部のOBとして集まったメンバーだった。 その日は霧が濃く、目的地の山頂は断念して、途中にある古い避難小屋で一夜を明かすことになった。 小屋はかなり古びていて、軋む扉を押し開けると、かび臭い空気と共にほのかに炭の匂いがした…
Kさんは山歩きと野営が趣味だった。 誰もいない山奥にテントを張って、焚き火の音を聞きながら夜を過ごす。 そんな時間が好きだった。 その日も人里離れた沢沿いの細い獣道を歩いていた。 陽はまだ高く、風もなく沢の水音だけが静かに響いていた。 途中、小…
駅ビルの警備員をしていたAさんの話。 Aさんはいつも通り、閉店後の巡回をしていた。 深夜1時を過ぎた頃、1階の正面入口にある自動ドアが、誰もいないのに何度も開閉を繰り返す。 カシャン、と開いてはゆっくりと閉まる。 そしてまた、カシャン、と開く。 A…
地方都市で解体業を営む、M社長さん(以下Mさん)の会社で起こった話。 Mさんの会社は、市から公共工事も請け負うことがあり、その日も市から依頼された案件で、森の奥にひっそりと佇む古い家屋の解体作業をすることになった。 現場は人里離れた深い森の中。…
デザイン事務所で働くKさんは、集中すると無意識に窓の外に視線を向ける癖があった。 高層ビルの窓から見える夜景は、心を落ち着かせるにはちょうどいい。 ある夜、Kさんがいつものように窓の外をぼんやりと眺めていると、ガラスに映る自分の顔の横に、ぼん…
警備会社で夜勤をしていたSさんは、いつものように監視カメラの映像を眺めていた。 深夜のオフィスフロアは、人の気配もなく静まり返っている。 そのはずだった。 通路のちょうど真ん中にそれはあった。 黒い塊。 まるで濃いインクが水に溶け出したように、…
広告代理店に勤めるMさんが体験した話。 Mさんはいつも残業が多く、深夜にオフィスビルを出ることが日常だった。 真夜中のオフィスビルはフロアに人の気配もなく、照明も半分以上が落とされ、昼間とは全く違う顔を見せる。 しんとした廊下を歩く自分の足音だ…
古くからの歴史を持つ、大きなお寺の住職になったAさんの話。 ある時、Aさんは寺の奥深くにある、滅多に開かれることのない古い蔵の整理をすることになった。 そこは長い年月によって積もり積もった埃と、朽ちかけた古い道具、そして虫食いの経典で埋め尽く…
小学生のSさんが、夏休みに祖父母の家を訪れた時のこと。 家の裏手には、林に囲まれた古くからある池があった。 普段はただの泥水が溜まっているだけの、何の変哲もない池。 子供心に特に興味を引かれることもなかった。 ある日の午後、Sさんは池のほとりで…
大学生のMさんが借りたアパートの一室は、築年数はそこそこだが陽当たりもよく、広さも手頃で気に入っていた。 引っ越してきて数日は、慣れない環境の疲れもあって、特に変わったことは感じなかった。 ただ、夜中に目が覚めると、時折、壁に貼られた花柄の壁…
Kさんが小学四年生だった頃に体験した話。 Kさんの家族は、父親の転勤で古く大きな屋敷に引っ越してきた。 新しい家は広くて庭も手入れが行き届かず荒れていたが、Kさんはどこかワクワクしていた。 探検好きのKさんにとって、この家は宝の山に見えた。 引っ…
大学生のKさんから聞いた話。 Kさんは大学の仲間と、夏休みに山奥にある小さな村の旅館へ卒業旅行に訪れた。 インターネットで偶然見つけたその旅館は、都会の喧騒から離れた静かな場所にあると書かれていた。 旅館に着くとKさんたちを出迎えたのは、白髪の…
深夜、Fさんが踏切を通った時の話。 レポートに集中していたら、いつの間にか日付が変わってしまっていたのだ。 小腹が空き、アパートから一番近いコンビニへと夜食を買いに向かうには、必ずあの踏切を渡る必要があった。 町中にあるその踏切は、昼間は学生…
とある地方の小さな神社で、宮司を務めるKさんが体験した話。 Kさんの務める神社は、古くからその土地を見守ってきた由緒ある場所だった。 しかし、他の神社と少し違う点があった。 それは代々、人々が持ち込む「曰く付きの品々」を預かる役目も担っていたこ…
Tさんが学生だった頃の話。 Tさんは大学の近くにある、古いアパートで一人暮らしをしていた。 家賃の安さに惹かれて決めたという。 部屋の隅にはびたタンスが置かれており、管理人さんからは前の住人が置いていったもので、好きなように使ってくださいと言わ…
若くして山奥の荒れた寺の住職になったTさんの話。 その寺は茅葺屋根が苔むし、石畳にはびっしりと草が生えているような、寂れた佇まいをしていた。 本堂の裏手にはうっそうとした竹林が広がり、昼間でも薄暗い。 Tさんはそんな静けさに惹かれて、この寺の住…
とある地方の古いお寺で、住職を務めていたSさんの話。 Sさんがこの寺に来たのは、まだ住職になったばかりの頃だった。 町中にある賑やかな場所とは無縁の、山あいのひっそりとした場所にある古い寺。 歴史を感じさせる伽藍は、夜になると一層静になる。 Sさ…
Yくんが小学校四年生だった頃の話。 季節は冬だった。 学校が終わると、Yくんはいつものように友達と校庭で日が暮れるまで遊んでいた。 鬼ごっこをしたり、サッカーボールを蹴ったりしているうちに、空は藍色に変わり、あたりはもうだいぶ暗くなっていた。 …
探検家のMさんは、数人の仲間と共に、古い地図に載る廃村の跡を探しに人跡未踏の山へ分け入った。 何日も険しい山道を進み、彼らはついにその場所にたどり着いた。 そこは古びた鳥居と朽ちかけた石仏が並ぶ、まさしく廃村だった。 風雨に晒され、原型を留め…
渓流釣りが趣味だというTさんから聞いた話。 彼は休日のたびに、奥深い山奥の沢へと分け入っていくのが常だった。 その日もいつものように人影ひとつない静かな沢の、お気に入りの場所で竿を出していた。 いつものように水が流れる音や、木々の葉が風にそよ…
紅葉が山々を鮮やかに染める季節。 数人の登山好きのSさんたちは、人気の少ない山を訪れていた。 いつもなら問題なく予定通りに進められたのだが、この日は少しばかり計画が狂っていた。 道中で思わぬ悪天候に見舞われたせいで、予定よりも大幅に到着が遅れ…
写真家のSさんは、常に新しい被写体を求めていた。 特に人があまり足を踏み入れないような、秘境と呼ばれる場所が好きだった。 カメラを片手に一人で山奥深く入り込み、誰の目にも触れられていないような自然の風景を切り取ることに、Sさんはこの上ない喜び…
Kさんは休日に一人で、人気の少ない山道をハイキングするのが趣味だった。 都会の騒がしさから離れ、静かな山道を歩くことが何よりのリフレッシュになっていた。 汗をかき、自然の中で心を解放する時間は、日頃の疲れを忘れさせてくれた。 ある日のこと、Kさ…
夏休みに入ってすぐ、Tくんは母方の田舎にある祖父母の家にやってきた。 蝉の声がうるさいくらいに響く、のどかな場所だ。 Tくんは都会の騒がしさから解放され、最初は楽しかったのだが…すぐに退屈してしまった。 いつもの夏休みならゲーム機を持ってきて、…
Kさんが小学生だった頃の話。 夏休みになると、Kさんはいつも田舎の祖父母の家へ遊びに行っていた。 祖父母の家は裏に小さな山があり、そこがKさんのお気に入りの遊び場だった。 その裏山には、今はもう使われていない古い貯水池がある。 水は澄んでおらず、…
大学生のSさんたちから聞いた話。 彼らは夏休みを利用して、大学の友人たちと連れ立って少し名の知れたハイキングコースにやってきた。 コースは整備されていると聞いていたので、地図もろくに見ず、ただ前を歩く友人の背中を追っていた。 初めのうちは鳥の…