ある夏の日、友達のタカシと俺は、山奥にあるっていう廃村を探検することにした。
その村は地図にも載ってなくて、地元の人もその存在をあんまり話したがらない、いわくつきの場所だった。
俺たちは朝早く出発して車で山道を進んでいった。
道は次第に狭くなり、舗装も途切れてきた。
午後になって車を降り、そこからは徒歩で進むことにした。
地図にもない場所だから方角だけを頼りに進むうちに、すっかり迷ってしまった。
やがて日が暮れ始め、携帯の電波も届かない中、心細くなってた俺たちが見つけたのはぼんやりとした光を放つ古い提灯だった。
その光をたどると、目の前に現れたのは、まるで時間が止まったかのような古びた村だった。
村の入口には苔むした鳥居が立っていて、その奥には無数の古い家が並んでいた。
俺たちは恐る恐る村に足を踏み入れた。
風が木々を揺らす音以外、何も聞こえない。
まるで全ての音が吸い取られてしまったかのようだった。
探索を続けていると、一軒の家からかすかなつぶやき声が聞こえる事に気が付き、俺たちは好奇心を抑えられず声のする方へ向かった。
その家の中には、ボロボロの着物を着た若い女性が一人座っている。
彼女はうつろな目で宙を見つめ、何かよくわからない言葉でお経のようなものを唱えていた。
その瞬間、俺たちは家の周りに異様な気配を感じた。
窓の外を見ると無数の人影が立ち並び、俺たちをじっと見つめている。
彼らの目は黒く光り、不気味な笑みを浮かべていた。
パニックになった俺たちは必死に逃げ出した。
村の出口を目指して走り続けると、突然足元が崩れて俺たちは深い穴に落ちてしまった。
目が覚めるとそこは見知らぬ山道で、俺たちが落ちた穴は跡形もなく消えていた。