大学時代の友人たちが、夏休みに久しぶりに集まることになった。
彼らは「怪現象が起こる」という噂のある山奥の古い旅館に泊まることにした。
友人の一人が運転する車で、話に花を咲かせながら旅館へ向かった。
夕方、旅館に到着すると、チェックインを済ませて広い和室に通された。
旅館のスタッフは親切だったが、どこか落ち着かない様子で、あまり長く話をしようとはしなかった。
まるで何かを隠しているかのようだった。
友人たちは噂の怪現象を楽しみにしていたため、夜も更けてから温泉に浸かりながら怖い話で盛り上がった。
部屋に戻ると、真夜中まで起きて異変が起こるのを待つことにした。
大学時代のおまぬけな話や怖い話で盛り上がり、午前2時を過ぎた頃、何故か突然会話が止まり、部屋が静まり返った。
友人の一人が耳を澄ませて
「なんか聞こえないか?」
その声に他の友人たちも耳を澄ますと、かすかに女性のすすり泣く声が聞こえてきた。
「やっぱり噂は本当だったんだ!」
興奮しつつも怖さが募り、全員が緊張した。
すると部屋の隅に置かれた古い屏風の後ろから、影が動くのが見えた。
薄暗い中、その影は徐々に形を成し人の姿になっていった。
友人たちは息を飲み、声も出せずにその影を見つめた。
影は女性の姿になり、悲しげな表情を浮かべながらこちらを見ている。
やがて影はふらふらと庭園の方へ向かって歩き始めた。
「追いかけてみよう!」
好奇心が勝り、友人たちは影を追って庭園に出た。
庭園は月明かりに照らされていて、その中ですすり泣く声が響き渡っていた。
影は池のところまで進むと、そのまま池の中に吸い込まれるように消えていき、すすり泣きも聞こえなくなった。
友人たちは言葉を失い、しばらくその場に立ち尽くしていた。
やがて恐怖と興奮が交じり合ったまま部屋に戻った。
夜が明けるまで全員がその出来事について話し合ったが、誰もフロントやスタッフには何も言わなかった。