これは私の友人Kが、大学時代に体験した話。
KとFは夏休みに、二人の高校時代の友人のYが、地方で借りたという一軒家に遊びに行くことになった。
Yの家は二階建てで、広い庭には古びた井戸があった。
その一軒家は驚くほど安い賃料で借りられたとYは話していたが、地元では少し変な噂があるという。
その噂とは、丑三つ時になると、庭にある井戸から誰かが喋っているような声が聞こえてくるというものだった。
KとFはその話を聞き、少し興味を持ちながらも半信半疑だった。
Yの家に着いたその夜、三人は久しぶりの再会を楽しみ、リビングで酒を飲みながら話に花を咲かせた。
夜も更け、時計の針が丑三つ時を指す頃、突然庭の方からかすかな声が聞こえた。
三人は一瞬何の音か分からず「今の聞いたか?」とKが言うと、YとFはうなずいた。
「もしかして噂の声か?」
とYが言い、三人は懐中電灯を手に庭へ向かった。
声は庭の奥にある井戸から聞こえてくる。
三人は慎重に歩を進め、声の源を探し始めた。
声は次第に大きくなり、井戸の近くで止まった。
Kが恐る恐る井戸の中を覗き込むと、暗闇の中には何も見えない。
すると突然井戸の中から再び声が響いた。
三人は驚き後ずさりした。
その瞬間、井戸の中から白い手が伸びてきた。
Kは驚いて懐中電灯を落とし、手が自分の足首を掴むのを感じた。
FとYが必死にKを引っ張り、三人は全力でその場を離れた。
家の中に戻ると、三人はドアを閉めて息を整えた。
Kは足首を見下ろし、そこに冷たい感触が残っているのを感じた。
三人は一睡もできずに夜を明かした。
翌朝、3人は近くのお寺に相談しに行き、起こった事を全て話すとお坊さんがすぐにお経を読みに来てくれることになった。
もう大丈夫でしょうという事だったが、もしまた井戸から何かが聞こえたら怖いので、Yは引っ越すことを決めた。