山奥にある、廃線になったトンネル…そこには、かつて列車事故で亡くなった多くの犠牲者の霊が彷徨っていると言われている。
その名も「怨霊トンネル」。
好奇心旺盛な若者たちは、この場所を肝試しスポットとして訪れることが後を絶たない。
ある夏の夜、肝試しが大好きな三人組、T、Y、M。
彼らは沢山の心霊スポットを巡っており、そのトンネルの噂を知り、確かめる為にやってきた。
トンネルの入り口には「決して入ってはいけない」という警告の看板が立てられていたが、彼らはそれを無視して笑いながら中に入っていった。
懐中電灯を手に、三人とも軽口を叩き合いながら進んでいたが、奥に進むにつれて何かが変わっていくのを感じた。
急に冷たい風が吹き抜け、身の毛がよだつような寒気が襲ってきた。
「おい、何か聞こえないか?」
Yが立ち止まり耳を澄ますと、遠くからすすり泣くような声が聞こえてきた。
最初は誰かのいたずらかと思った三人だったが、その声が次第に近づいてくると彼らの顔から笑顔が消えた。
「ここはやばい、戻ろう。」
Tが提案し、三人は引き返そうとしたが、なぜかトンネルの出口が見当たらなくなっていた。
暗闇の中でパニックに陥り、叫び声を上げながら出口を探し続けた。
Mが後ろを振り返ると、白い影が彼らを追いかけてくるのが見えた。
「あれ見て!何か来る!」
その声に振り返ったTとYも、その白い影を目にした。
その影は次第に近づき、冷たい手が伸びてくるのを感じた瞬間、三人は全力で走り出した。
ようやく出口にたどり着いた時、三人は息を切らし全身汗だくになっていた。
三人は息を整えながら、トンネルの入り口に座り込んだ。
「今の一体何だったんだ?」
Tが恐る恐る口を開いた。
「確かに何か追いかけてきたよな…」
Yも怯えた声で続けた。
Mは震えながら
「俺、あの白い影に『オイテケ…』って囁かれたんだ」
と言った。
「オイテケ?何を?」
Tが不安そうに尋ねた。
「わからない。でも、何かを置いていけって…」
とMは言った。
三人はその場でしばらく黙り込んだ。
結局、何を置いていけと言われたのかは分からなかったが、彼らはもう二度とそのトンネルには近づかない事にしたそうだ。