この話の舞台は都内から少し離れた、とある郊外にそびえ立つ築30年ほどの少し古びたマンション。
そのマンションでは、数年前から不可解な噂が流れ始めていた。
それは深夜にエレベーターに乗ると、決まって自分の後ろに真っ赤な人影が映り込む、というもの。
はじめは見た人の見間違いだろう、と噂の域を出なかった。
しかし、その噂を耳にした住人の一部が深夜にエレベーターに乗るようになり、噂は本当だったんじゃないか?と言われるようになった。
これはそのマンションに住んでる、知り合いのAさんが体験した話。
深夜1時を過ぎた頃、仕事から疲れて帰宅したAさんは、マンションのエントランスをくぐるといつも通りエレベーターに乗り込んだ。
疲れたなーとエレベーターの壁に寄りかかり、閉まるエレベーターのドアを見ていると、ドアの隙間からふっと赤い影が見えた気がした。
「なんだろう今のは」
まあいいか、と自分の部屋がある5階のボタンを押した。
エレベーターはゆっくりと上昇していく。
ボーっとしながらエレベーター内の鏡を見ていると、背筋が凍るような感覚に襲われた。
鏡をよく見てみると、自分の横に明らかに自分ではない「何か」が映っていた。
それは人間の形をした真っ赤な影、というのだろうか。
顔も服装も分からず、ただぼんやりとそこにある赤い影…その影は、横にいるAさんをじっと見つめているようにも感じられる。
冷や汗がどっと吹き出る。確かめたいが、もし本当に自分の隣にいて、それと目があってしまったらどうなってしまうことか。
そう考えると横を見る事も出来ず、ただただ早く5階に着いてくれ!と祈る事しか出来ない。
ほんの数秒が嫌に長く感じたが、エレベーターは間もなく5階に到着した。
ドアが開いた瞬間、Aさんは一目散にエレベーターから出て自分の部屋へと逃げ込んだ。
部屋に戻ったAさんは部屋の電気を点けて水を飲み、今のはきっと見間違いだ、疲れで幻覚を見たに違いない!そう思い込み、冷蔵庫からビールを取り出し飲み干した。
後日、赤い影を見たという住人が後を絶たず、ついにマンションは「呪われたマンション」と呼ばれるようになってしまい、住人は次々と引っ越していき、今では誰も住んでいないそうだ。