東京より山側にある、とある町でのこと。
そこに一人暮らしをしていた大学生のAさんは、数日前から奇妙な現象に悩まされていた。
それは夜中の2時になると、決まって天井裏から「トトトトト」という足音のような音が聞こえてくるというものだった。
最初はネズミでもいるのかと思い、駆除剤を置いたり業者に依頼したりもしたが、効果はなかった。
それどころか「トトトトト」という音は日に日に大きく、そして不規則になっていった。
ある夜のこと、Aさんは気になって一睡もできずに朝を迎えた。
こんな事がこれ以上続いたんじゃ洒落にならない、そう思ったAさんは意を決し、天井裏を確認することにした。
昼間の明るい時間を選び、懐中電灯を持ち、脚立を使って天井裏への点検口を開けた。
中はひんやりとした空気が漂い、少し埃っぽかったが特に異常は見当たらなかった。
「ネズミか何かだろう」と自分に言い聞かせ、Aさんは安心しようとした。
その夜、再びベッドに入り眠りについたのだが、やはり2時になると例の「トトトトト」という音が聞こえてきた。
今度は音がAさんの上の天井裏を歩き回っているように感じられた。
「もう我慢できない」
Aさんは意を決し、スマホのライトを片手に再び天井裏を確認しに向かった。
点検口を開け慎重に天井裏に顔を出す。
すると、目の前に何かが動いたような気がした。
「なんだ?」
Aさんの声が震える。
静寂が続き、しばらくの間何も起こらなかった。
そう思って安心しかけた時、Aさんのライトが何かを捉えた。
それは小さな子供のような姿で、こちらをじっと見つめていた。
え?子供?なんでこんなところに?
そう思った時、その子供が突然Aさんの方に向かって走ってきた。
驚いたAさんは急いで脚立から飛び降り、そのままスマホと財布だけを持って部屋を飛び出した。
震える手でスマホを使い、近くに住む友達のBさんに電話をかけた。
「もしもしB!?すまないが今すぐそっち行っていいか!?
ヤバイんだ!」
捲し立てるように事情を話してBさんの住んでるアパートに向かった。
Bさんのアパートに到着するとBさんが外で待っていてくれた。
部屋に入ると、とりあえずこれでも飲め、と言って缶ビールを渡されたので、Aさんは一気に飲み干した。
「さっきの話じゃ分かりづらいからもう一度話してくれ」
Bさんがそう言うと、落ち着いてきたAさんが話し出す。
「天井裏に小さな子供がいたんだ。
でもどう考えても生きてる人間じゃないよな?」
「そんなところに生きてる人間が、しかも子供だし真夜中に起きてるはずないな」
とBさんが言う。
「で、その子供が俺の方に向かって走ってきたんだ。
それでびっくりして部屋を飛び出してBに電話をしたってところだ」
Bさんは真剣な表情で聞き入った後、静かに言った。
「明日お寺に行ってお経でも読んでもらったほうがいいんじゃないか?」
Bさんの提案にAさんは少し考え込んだ。
お経で本当に何か変わるのだろうか。しかし他に思いつく方法もなく、不安な気持ちを抱えたままではいられなかった。
「そうだな…そうしてみよう。ありがとう。」
Aさんはそう言ってBさんに感謝し、二人はそのまま夜通し語り合い、怖さを紛らわすためにテレビを見たり他愛もない話をしたりして時間を過ごした。
翌日、AさんとBさんは近くのお寺に行き、お坊さんに事情を話した。
お坊さんは親切に対応してくれ、Aさんの部屋でお経を読んでもらうことになった。
午前中にお坊さんを案内し、部屋でお経を読んでもらった。
お経が終わった後、お坊さんはこう言った。
「この家に以前住んでいた家族の子供が、不幸な事故で亡くなったようです。
しばらくはお供えをしてあげてください」
その後、Aさんは言われたように毎朝ジュースとお菓子をお供えしているようだ。