Nくんが通う中学校のキャンプ行事には、キャンプ場の近くに小さな川が流れていて、昼間は生徒たちの遊び場だった。
水遊びや魚を捕まえたりして楽しむ事が出来る。
しかし、夜になるとその川から奇妙なささやき声が聞こえてくるという噂があった。
ある夜、Nくんはその噂を確かめるために一人で川に向った。
夜の静寂の中、足音だけが響く。
川辺に近づくと冷たい風が吹き、Nくんは少し身震いした。
川の水音に混じって、確かに何かがささやいているような声が聞こえが、川の流れる音だろうと思いながら懐中電灯で川辺を照らしてみた。
すると懐中電灯で照らした先、川の向こう岸影が立っているのを見つけた。
それはじっとこちらを見つめているようにも見える。
Nくんは驚いて後ずさりしたが、影は動かない。
恐怖で足がすくんでしまい、声が出せない。
Nくんはなんとかその場を離れようとするが、足が動かない。
突然、背後から誰かがNくんの肩を叩いた。
思わず叫びそうになり、急いで振り返ると、そこには心配そうな顔をした同級生のKくんが立っていた。
「どうした?みんなが探してるぞ。」
NくんはKくんの顔を見て安心し
「あそこ、あそこに変な影が」
と震える声で伝えると
「大丈夫だ、気にしないようにして。」
「この事は皆に言わない方がいい、下手するとあれに気づかれちゃうからね」
そう言ってNくんの手を引っ張って皆の場所に戻った。