ある秋の朝、友人のNとM、そして俺の三人は久しぶりに山登りに出かけた。
天気は曇りがちだったが、登山には問題ないと思っていた。
山の麓に着いた頃、霧が立ち込め始めていたが、俺たちは気にせず登ることにした。
登山道を進むにつれて霧はどんどん濃くなり、視界がほとんど効かなくなった。
あたり一面が白い壁に包まれているようで、10メートル先も見えない状況だった。
そんな中、Nが不意に立ち止まった。
「おい、あれ見えるか?」
Nが指差す方向を見ると、霧の中に人影がぼんやりと浮かんでいた。
「誰か登山者かな?」
とMが言ったが、その影はまるで幽霊のように静かに立っているだけで動かない。
俺たちはその人影に向かって進んでみることにした。
だが、近づくたびに影はぼんやりと消えてしまい、再び遠くに現れるという繰り返しだった。
「なんだこれ、気味悪いな…」
と俺が呟いた。
「もしかして、迷子になった登山者かもしれない」
とNが心配そうに言った。
俺たちは慎重に進みながら、その人影を追い続けた。
しかし、影はどんどん遠ざかり、ついには全く見えなくなった。
「やっぱり、おかしいよ。このまま進んでいいのか?」
とMが不安げに言った。
「でも引き返す道もわからないし、ひとまず進むしかないだろう」
と俺は言った。
その時、不意に冷たい風が吹き霧が一瞬晴れた。
その瞬間、俺たちは足元に古びた登山道の標識を見つけた。
そこには「危険、進入禁止」と書かれていた。
「ここは行っちゃいけない場所だったんだ…」
とNが顔を青ざめさせた。
俺たちはその場で立ち止まり元来た道を引き返すことにした。
慎重に歩きながら先ほどの人影が何だったのか、と話し合っていると
「もしかして、あれは俺たちに警告をくれたのかもしれないな」
とMが呟いた。
「いやいや、警告してくれたならどうして俺たちを進入禁止の場所に誘導したんだ?」
そう言うとMは
「あ、確かに…」
と言った後、Nが
「もしかして俺達を仲間に引き入れようとしてたんじゃないか?
もし途中であの風が吹いて標識に気づかなかったら…」
俺達は急に怖くなり、急いで下山した。
麓に着いた時、登る道にあるお地蔵さんにお茶と食べ物をお供えして帰った。