ある晩、山奥の小さな村に住むSさんは森の奥で仕事をしていたのだが、休憩していたときについ寝てしまい、気がつくともう夜になっていた。
おもいきり寝過ごした!と急いで帰っていると、夜の静けさの中にかすかな音楽のようなものが聞こえてきた。
「こんな夜に森の中に誰かいるのか?」
とSさんは音の方へと歩いていく。
だんだんと音楽がに大きくなり、かすかな笑い声や話し声も聞こえてきた。
やがて月明かりに照らされた広場のような場所にたどり着いた。
こんな広場あったっけな?と思って見ていると、数十匹の狐たちが集まって華やかな宴を開いている。
狐たちは色とりどりの着物を身にまとい、舞踏を踊りながら楽しげに談笑していた。
まるで人間の宴のように、狐たちはおいしそうな食べ物を囲み、音楽に合わせて踊っていた。
「まだ夢でも見ているのだろうか…」
Sさんはその光景に圧倒されしばらく呆然と見つめていたが、突然、狐たちの中の一匹がSさんの方を向いた。
狐の目が鋭く光り、他の狐たちも次々とSさんの方に向いた。
狐たちの笑い声は途絶え、踊りも止まってしまった。
Sさんは恐怖を感じてその場から逃げようとしたが、狐たちが一斉にSさんの周りを囲み始めた。
Sさんは必死に逃げようとしたが狐たちの動きが素早く、逃げ場がなくなった。
狐たちはSさんの周囲に取り囲み始める。
狐たちの目には冷たい光が宿り、Sさんはその場に立ち尽くすしかなかった。
「お願いだ、助けてくれ…」
Sさんは必死に助けを求めていると、一匹の狐がSさんに近づいてきた。そしてSさんの頭の中に「この事は誰にも言うな」と聞こえた。
Sさんは震えながら「分かった、誰にも言わない。だから助けてくれ」と言った。
その瞬間、Sさんの視界は暗くなり意識が遠のいていった。
目が覚めると、Sさんは森の中に横たわっていた。
周囲には何もなく、狐たちの姿はどこにも見当たらなかった。
Sさんは震えながら立ち上がり、無我夢中で森を抜け出した。
その後Sさんは村に戻り、何事もなかったかのように過ごした。
しかし、時折夢の中で狐たちの宴の光景や冷たい視線を思い出し、身震いするんだそうだ。