お盆の夜、Sさんと友人たちは夏の恒例行事として、肝試しに出かけることにした。
目的地は地域の外れにある古いお寺の跡地だった。
時間は23時過ぎ、懐中電灯やスマホのライトを手にしたSさんたちは、お寺の跡地へと向かったのだが、途中で奇妙な音や影に驚かされながらも、なんとか目的地にたどり着いた。
お寺の跡地は、朽ち果てた石像や苔むした石段が残る静かな場所だった。
Sさんたちはその場で肝試しを始め、順番に一人ずつ境内を歩いて戻ってくるというルールにした。
最初に行ったのはAさんだったが、戻ってきた時の顔は青ざめていた。
「何か見たのか?」
と友人たちが尋ねると、Aさんは震える声で答えた。
「石像の影が動いた気がするんだ…」
次に行ったBさんも、同じように怯えた様子で戻ってきた。
Bさんは
「古いお堂の方から、誰かがぶつぶつ呟いている声が聞こえた…」
と話した。
最後にSさんが行く番になった。
Sさんは友人たちの話を聞いて少し不安になったが、勇気を振り絞って境内を歩き始めた。
静寂に包まれたお寺の跡地を歩くうちに、Sさんは奇妙な感覚に襲われた。
背後から誰かに見られているような気がする。
ふと振り返ると遠くに薄ぼんやりとした人影が見えた。
その人影はSさんをじっと見つめているように見えた。
Sさんは恐怖を感じ急いでその場を離れようとしたが、足がすくんで動けなかった。
その時、背後から誰かがぶつぶつと何かを呟いている声が聞こえた。
心臓がバクバクと音を立てる中、Sさんは全力でその場を駆け出した。
友人たちの元に戻ると、Sさんは息を切らしながら
「ここを出よう」
と叫んだ。
皆もSさんの恐怖を感じ取り、すぐにその場を離れることにした。
帰り道、彼らは何度も道を間違え、同じ場所を何度も通り過ぎるような感覚に陥った。
周囲は深い霧に包まれ視界がどんどん悪くなっていく。
まるで何かに邪魔されているような感覚だった。
ようやく家の近くに戻ったSさんたちは、みんな疲れ果てていた。
家に帰ってからさっきの出来事を爺さんに話すと、お盆の夜は霊が活発になると言われ
「肝試しには行くべきではなかったな」
とニヤニヤしながら言われた。