
K君は毎朝通っている通学路が好きだった。
家から学校までの道のりは、友達と合流して一緒に歩くのが楽しみだったからだ。
その日もいつものように家を出て、友達と待ち合わせ場所で合流した。
ところがいつもの角を曲がった瞬間、K君たちは立ち止まった。
見慣れた通学路が消えてしまっていて、代わりに見知らぬ道が続いていたのだ。
不安に感じつつも時間がないため、そのまま進むことにした。
道は次第に狭くなり、両側には背の高い木々が生い茂っていた。
空は曇り、薄暗くなってきた。
やがて奇妙な静けさが辺りを包み始めた。
鳥の声や風の音すら聞こえなくなり、K君たちは緊張感を覚えた。
さらに進むと、突然霧が立ち込めてきた。
視界がほとんど効かなくなり、友達の姿もぼんやりとしか見えない。
K君は急に寒気を感じ、背筋がぞくりとした。
その時、霧の中から誰かの囁き声が聞こえてきた。
「こちらに来てはならない」
K君たちは立ち止まって恐怖におののいた。
進むべきか引き返すべきかを迷っていると、霧の中に不気味な影が見えた。
それは人間の形をしていたが、異様に大きくゆらゆらと揺れていた。
「もう戻ろう!」
と友達が叫んだ。
しかしその瞬間、K君は足元が急に重くなり、まるで何かに引っ張られているような感覚に襲われた。
動こうとしても足が動かない。
「助けて!」
と叫び声を上げるが、声は霧の中に消えていった。
それと同時にK君の眼の前が暗くなり、気を失った。
気がつくと、K君は学校の校門の前に立っていた。
友達もそばにいたが、皆一様に青ざめていた。
時計を見ると、通学路に入ってからまだ数分しか経っていないことに気付く。
しかし、その道を通ってきた記憶は確かにあり、皆が同じ体験をしたことを確認し合った。
K君たちは二度とその道を通ることはなかった。
その日以来、見知らぬ道は再び現れず、通学路は元通りになっていた。