これは、数年前に知り合いのUさんが体験した不気味な話。
その夜、Uさんは仕事の関係で遅くなり、深夜に一人で山道を車で走っていた。
山道は街灯もほとんどなく、車のヘッドライトだけが道を照らしている。
車内には静かにエンジン音が響くだけで、Uさんは早く家に帰りたいと急いでいたのだが、何となく後ろが気になったUさんはバックミラーを見た。
すると後部座席に見知らぬ女が座っているのが見えた。
顔は青白く、髪は長くて乱れており、無表情のまま前を見つめている。
驚いて振り向いたが誰もいない。
しかし再び前を向いて運転を再開すると、急に女の顔がUさんのすぐ横に現れた。
後ろからぬっと顔を出し、低く静かな声で
「次、そこを曲がって」
と言う。
Uさんは恐怖で固まりそうになりながらも、指示通りにハンドルを切る。
頭の中は混乱していたが振り返る勇気もなく、ただ必死に運転を続けた。
その後も女は何度か道を指示し、Uさんは恐怖に駆られながらその通りに進んでいった。
やがて全く知らない場所にたどり着いた。
目の前には古びたお墓がぽつんと立っている。
辺りはひっそりとしていて、不気味な静けさが漂っていた。
車が止まると背後から
「ありがとう」
というかすかな声とともに、何かが車から降りていくような感覚がした。
恐る恐る振り向いたがもう誰もいない。
ただ、どこかで鈴の音がかすかに聞こえた気がした。