秋の紅葉が美しい山道を、Uさんは一人でハイキングを楽しんでいた。
辺りはひっそりと静まり返っていて、時折風が吹くと木々の葉がカサカサと音を立てる。
足元には色とりどりの落ち葉が敷き詰められ、歩くたびにカシャカシャと音が鳴るのが心地よかった。
日が傾き始め、そろそろ帰ろうかと思い道を引き返していると、後ろから誰かがついてくるような気配を感じた。
Uさんは振り返ってみたが誰もいない。
気のせいかと思って歩き出すと、またカサカサと足音がついてくる。
「おかしいな」とUさんは感じたが、あまり気にせず足を進めた。
その音は、まるで誰かがUさんの歩幅に合わせて、同じペースでついてくるようだった。
少し怖くなったUさんは試しに足を止めてみた。
すると背後の足音もピタリと止まる。
「やっぱり誰かいる」
そう思ったUさんは再び後ろを振り返ったが、やはり誰もいない。
途中何度も後ろを確認したが動物すら見えなかった。
辺りはすっかり薄暗くなり、道も見づらくなってきた。
Uさんは少し足を速めて下山しようとしたが、その足音も追いかけるように速くなる。
まるで見えない誰かが後ろからどんどん近づいてくるような気配に、Uさんは怖くなってきた。
慌てて道を駆け下り、やっと山の入口が見えたところで背後の足音がピタリと止んだ。
Uさんは息を整え振り返った。
そこには、風に揺れる落ち葉と紅葉だけが揺れていた。
Uさんはそれを見てホッとし山を後にしたが、あのカサカサとした足音が遠ざかっていく音が響いていた。