学生時代の友達だったSさん、Kさん、Tさん、Mさんの4人は、久々に集まることになった。
再会の喜びもあって、飲みながら話しているうちに、昔の肝試しの話題が出た。
そこで、勢いに任せて「もう一度肝試ししよう!」という話になり、ちょうど神無月の夜だったこともあって、地元の廃神社に向かうことになった。
その廃神社は、昔から「夜に行くとよくないことが起きる」と言われている場所だったが、彼らはその噂をあまり気にしていなかった。
懐中電灯を持ち、少し酒が入っていたこともあって、笑いながら神社に向かう。
空は曇っていて月明かりも弱く、風が冷たく感じた。
神社に到着すると崩れかけた鳥居をくぐり、薄暗い境内に入った。
神社の本殿は長い間放置されていて、草やツタが絡みついている。
彼らは本殿の前に集まり、懐中電灯の光を頼りに持ってきた飲み物や食べ物を広げ、怖い話を始めた。
「さ、誰が最初に話す?」
Kさんが笑いながら問いかけると、Sさんが意気揚々と最初の怖い話を始めた。
話が進むにつれ、周囲の静けさと相まって次第に緊張感が高まっていく。
皆懐中電灯の光に照らされながら話に聞き入っていた。
しかし、その時だった。
本殿の奥にある古びた神棚が突然ガタガタと音を立て始めた。
「な、なんだ?」
Tさんが驚いて神棚を見つめると、全員がその揺れる神棚に目を奪われた。
何かが起こっている。
しかし誰も動けないままその音をただ聞いていた。
するとどこからともなく低いうめき声が聞こえてきた。
最初はかすかなもので風の音と錯覚するほどだったが、徐々にその声は大きくなっていった。
まるで誰かが苦しんでいるような、呻くような声だった。
「聞こえるか?」
Mさんが不安そうに尋ねる。
全員が頷いた。
声は本殿のどこかから響いている。
辺りを見回しても誰もいないが、その声だけが確かにそこにあった。
恐怖が一気に彼らを襲い、誰かが言った。
「ここやばい…出よう!」
その言葉に全員が同意し、立ち上がろうとした瞬間、足元に奇妙な感覚が広がった。
まるで氷のように冷たく、足が地面に縛りつけられたように動かない。
パニックになりながら必死に足を引き抜こうとするが、まるで見えない力に捕らえられたように動けない。
呻き声はますます大きくなり、四方から響くように彼らを囲んでいた。
息が詰まるような恐怖に冷や汗が背中を伝う。
足元はさらに冷たく、感覚が無くなっていく。
「すみませんでした!見逃してください!」
Sさんがそう叫んだ瞬間、ようやく足が動き始めた。
持ってきた飲み物や食べ物は放置し、全員がその場を振り切るように一斉に走り出した。
廃神社から逃げる途中、誰も後ろを振り返れなかったそうだ。