Yさんは仕事の都合で地方に転勤し、人口の少ない山間部のマンションに住むことになった。
築30年以上のそのマンションは住人が少なく、Yさんが出入りする時に他の住人と顔を合わせることはほとんどなかった。
その日、残業を終えたYさんは疲れ切った体でマンションのエレベーターに乗り込んだ。
夜も更けており、エントランスから上の階へ向かうエレベーターは、いつものように静まり返っていた。
ボタンを押し、数字が一つずつ上がっていく表示をぼんやり眺めていたその時。
押していないはずの3階でエレベーターが停止した。
この階には人が住んでいないと管理人から聞いていたはずだ。
少し嫌な気持ちが胸をよぎる。
ドアが開くと暗い廊下が静かに広がっているだけで、誰もドアの近くや廊下にはいない。
だが突然冷たい風が吹き込んできて、Yさんは思わず肩をすくめた。
何かおかしい。
廊下の窓は全て安全の為に閉まっている為風が入る場所などない。
そう考えているとエレベーターが少し揺れた。
まるで誰かが乗り込んできたかのように。
「何だ!?今のは」と考えているとドアが閉まり、エレベーターが再び動き出した。
やがてYさんの住んでる部屋の階に着いたのだが、Yさんは思わず降りるのをためらった。
ふと床を見ると、エレベーターの隅に泥のついた靴跡が、ぽつりぽつりと残されていた。