Rさんは週末、友人と訪れた山小屋に泊まっていた。
木造の簡素な造りだが山の静けさと星空が心地よく、夜は早めに床に就いた。
深夜ふと目が覚めると何かの気配を感じた。
部屋は暗く、窓から月明かりがぼんやり差し込んでいる。
ぼんやりと天井を見上げた瞬間、Rさんは息を飲んだ。
そこに白い顔が浮かんでいた。
性別も年齢も分からない無表情な顔が、わずかに揺れながらRさんの真上に漂っている。
目が合った瞬間身体が凍りついた。
金縛りではないが恐怖で身動きが取れない。
最初は夢だと思おうとした。
疲れのせいだ、寝ぼけているだけだと。
しかし視線を動かしても顔はそこにある。
現実感が増していくにつれ背筋が冷たくなった。
顔はゆっくりと動き出し、天井に向かって吸い込まれるように消えていった。
Rさんは震える手で布団を剥がして飛び起き、すぐに明かりをつけて部屋を見回す。
天井、窓、壁。
どこにもおかしなものはない。
気のせいだと言い聞かせようとしたが、床にうっすらと白い粉のようなものが落ちているのを見つけた。
天井をもう一度見上げると、板の隙間がほんの少し開いている。
「あの隙間から?」
Rさんは気のせいだと無理やり納得しようとしたが、目を閉じるたびにあの顔が脳裏に浮かんで眠ることはできなかった。
翌朝、友人に話そうとしたが、話すのもはばかられるほど奇妙な体験だった。