Kさんたちがその噂を耳にしたのは、学校の怖い話が話題に上ったある日のことだった。
「誰もいない深夜の放送室で、囁き声が響いてくるらしい」
そんな噂に興味を持ったKさんと仲間たち3人は、ある夜忍び込むことを決意した。
「けどさ、学校なんて夜は鍵が掛かってるだろ?」
友人のYさんが計画にやや消極的な様子で言う。
「まあもし閉まってたら帰ればいい。運が良ければ入れるだろ」
Kさんがそう言うと渋々うなずいた。
時刻は夜中の1時。
校門をこっそり越え、暗闇の校舎に足を踏み入れる。
幸いなことに裏口のドアには鍵が掛かっていなかった。
「やっぱ田舎の学校は緩いんだな」
Sさんが皮肉めいた笑いを浮かべた。
それぞれ持ってきた懐中電灯を付けると、早速放送室を目指して歩き出した。
校内はひんやりとしていて、床板が微かにきしむ音が耳に障るほど静かだった。
「本当に聞こえるのかよ?」
Yさんが不安げに声を漏らすが、Kさんは笑って答えた。
「怖いなら帰っていいぜ。俺たちで確かめるから」
そう言いつつも彼自身の手は微かに震えていた。
階段を登り放送室の前にたどり着くと、薄暗い廊下に何とも言えない緊張が漂う。
ドアノブに手をかけた瞬間、誰かが微かに呟いたような気がして全員が動きを止めた。
「…聞こえた?」
全員の顔が強張る。
Kさんが意を決してドアを開けて懐中電灯を照らすと、放送室の中は以外と狭かった。
マイクや機材が並び、埃っぽい空気が漂っている。
「何もいないね」
Yさんが気を抜いた声を上げたその時、スピーカーからぼそぼそとした声が聞こえ出した。
低くてかすれたような声で何かを喋っているのだが、内容は不明瞭で聞き取れない。
Yさんが震える声で
「これ、喋ってるやつがここにいるのか?」
と呟いた直後だった。
Kさんの視界の端に、何かが映った。
放送室の隅、暗がりの中にあるロッカーのそばに黒い影が立っていた。
「おい、見ろ!」
声を張り上げると全員がその影に気づく。
影はゆっくりとこちらに顔を向けた。
そこにあったのは骸骨のように痩せこけた顔、暗い目の窪みからじっとKさんたちを見つめていた。
その瞬間、スピーカーから「ハァァァ…」と息を漏らすような音が響き渡る。
慌てて逃げ出そうとしたその時、黒い影がするりとロッカーの中に吸い込まれるように消えた。
「逃げろ!」
Kさんたちは一目散に廊下を駆け抜け校舎を後にした。
後日、Kさんたちが耳にした話によれば、放送室のロッカーは何年も前から誰も使っていないという。
さらに噂の始まりは、数年前に放送室で不慮の事故で亡くなってしまった生徒がいるという話だったらしい。