子ども会のキャンプでの夜、Rさんは友達と一緒に肝試しイベントに参加していた。
ルールは二人一組になり、キャンプ場の施設の周囲をぐるりと一周するというもの。
途中には保護者が何人か隠れていて驚かせる役をしているが、暗闇の中を歩くだけで十分に怖い。
Rさんたちの順番が回ってきた。
懐中電灯を片手に、二人は施設を囲む小道に足を踏み入れる。
街灯はほとんどなく、足元をかろうじて照らす懐中電灯の心細さに、二人は「怖いね」と小声で話していた。
遠くから保護者の笑い声や驚かすための声が聞こえるが、それでも静かな夜の中では不気味に響いていた。
施設の裏手に差しかかるとそこは完全な暗闇だった。
林が近くにあり、木々が風にざわめいている。
「あそこ通るの?」
と友達が声を潜める。
懐中電灯の光を木々向けていると、林の奥で小さな光が揺れた。
「あれ何だろう?」
二人は思わず足を止めた。
光はぼんやりと白くふわふわと浮かんでいる。
最初はホタルかな?と興味を持ったが、近づくにつれてその光はホタルにしては大きすぎることに気付く。
光の玉はまるで彼らに気付いたかのように近寄ってきた。
そしてその中には…猫がいた。
二人は言葉を失った。
玉のような光の中に黒い猫が浮かんでおり、前足を揃えて座るような姿勢でふわふわと漂っている。
猫の目がわずかに光を反射し、まるでじっと二人を見つめているようだった。
「何これ…猫…だよね?」
「浮いてる…光ってる…」
猫は無表情のまま彼らの脇をゆっくりと通り過ぎ、やがて再び林の中へと消えていった。
光の玉の揺れが少しずつ遠ざかり、完全に闇に溶け込むまで二人はその場で立ち尽くしていた。
やがて我に返った二人は
「猫が光ってた!浮いてた!」
と興奮気味に話しながら足早にゴール地点へ向かった。
ゴールに着くと保護者や他の子どもたちにそのことを話したが、誰も信じてくれなかった。
「保護者の誰かが光るボールを釣り糸で浮かせてたんだろう」
とか
「ホタルを見間違えただけだ」
と言われるばかりだったが、Rさんたちは確かに見たのだ。光る猫を。
いまだにあの猫が何だったのか、その正体は謎のままだという。