Rさんたちは夏の高原でキャンプをしていた。
山の澄んだ空気と満点の星空を楽しみながら、焚き火を囲んで語り合う夜は格別だった。
深夜になり火が小さくなり始めた頃、ふとRさんが「何か動いてる」と言い出した。
皆で焚き火を囲みながら視線を向けると、草むらの奥に白い影が見えた。
それはゆらゆらと揺れながら近づいてくる。
「動物かな?」
と誰かが言ったが、その影は人のような形をしていた。
顔は見えないが肩から足先まで白っぽい衣のようなものに包まれ、ひょろりと長い手足がやけに不気味だった。
それが足を引きずるようにして焚き火の光が届く範囲まで近づいてきた時、全員の背筋が凍った。
影はまるで風が吹いているかのように揺れながら、焚き火の近くで立ち止まった。
そして微動だにしないRさんたちに向かって、何かを見つめているようだった。
誰も声を出すことができず、ただ息を潜めて影の動きを見守るしかなかった。
やがて影は再びゆっくりと動き始めた。
今度は高原の小道に向かいふらふらと歩いて行った。
皆が呆然と見送る中影は徐々に遠ざかり、ついには木々の間に吸い込まれるように消えていった。
その後誰も眠ることができず、震える手で荷物を片付け始めた。
あの影が戻ってくるのではないかという恐怖が、朝が来るまでRさんたちを支配していたという。
翌日、帰る前に彼らはあの小道を調べに行った。
だが影が消えたあたりには人の足跡など何もなく、代わりに見つかったのは、誰がつけたのか分からない深い引きずり跡だったそうだ。