これは学生時代に親しくしていたRさんから聞いた話。
Rさんたち数人の友人グループは、夏休みを利用して山奥のキャンプ場へ行くことにした。
その場所は川がすぐ近くにあり、涼しい風が流れる絶好のキャンプ地として知られていた。
夕食を終えた後、彼らは焚き火を囲みながら喋っていたそうだ。
時刻はすでに深夜に差し掛かった時、川の向こう側から奇妙な音が聞こえてきた。
最初は風の音かと思ったそうだが、それは次第に明確な声になり何かを叫んでいるようだった。
驚いたRさんたちは懐中電灯を持って声の方へ光を当てた。
すると対岸の薄暗い森の中、誰かが立っている。
その姿は人のように見えたものの、周囲に馴染まない不気味さがあった。
その人物は助けを求めているように両手を振り上げ、何かを必死に叫んでいる。
「こんな夜中に、あんな場所に一人でいるなんておかしい」
仲間の一人がそう呟いたのをきっかけに、グループはその人物がただ事ではない状況にあると判断した。
全員で懐中電灯を手に取り、橋を渡って対岸に向かおうとした。
近づくにつれてその人影が徐々に鮮明になっていく。
長い髪、白い服、そして不安げな顔つきがはっきり見えた。
しかし、彼らがもう少しでたどり着くというところで、その人影は突然ふっと消えてしまった。
それは霧が霧散するように、何の痕跡も残さずに消えた。
呆然と立ち尽くすRさんたち。
その時、ふいに背後でまた同じ声が聞こえてきた。
慌てて振り向くと、今度は彼らが焚き火を囲んでいた元の場所に、あの白い服の人影がぼんやりと佇んでいるのが見えた。
全員の背筋に冷たいものが走った。
震える足で元の場所へ戻ると、そこにはもう何もなかった。
ただ、焚き火の火が小さく揺らめく中、何かを囁くような音がしばらくの間続いていたと言う。
Rさんたちはその夜一睡もできなかった。
その後、地元の人に話を聞いたところ、その川ではかつて何人もの人が流され、行方不明になっているという話を聞かされた。