Rさんが鉄道写真を趣味とする大学生だった頃の話。
ある日、Rさんは友人と廃線跡を巡る撮影旅行に出かけた。
途中山奥の朽ちた無人駅にたどり着いた二人は、その場所の静けさに感動し、しばらく撮影を楽しんだ。
しかし日は早くも傾き薄暗くなり始めたため、その駅近くにあった小さな民宿に泊まることにした。
夜、疲れ果てたRさんは深く眠りについたが、夜中にふと目が覚めた。
トイレに行こうとベッドから起き上がり、部屋の隅に置かれた古びた鏡台に目が止まった。
そこになぜか淡く人の影が映っているように見えた。
不思議に思って首を傾げながら鏡台に近づくと、影が動いていることに気づいた。
驚いて目を凝らすと、鏡の中に小さな子供の顔がぼんやりと浮かんでいた。
その顔がRさんをじっと見つめている。
怖くなったRさんは友人を起こし、慌てながら友人に説明する。
友人は落ち着けと言っているので、とりあえずあれを見ろ!と鏡台を指差す。
友人は最初なんの事だか分からなかったようだが、どうやら友人にも見えたらしい。
なんだあれ!?と叫び、一緒にフロントに駆け込んだ。
事情を説明すると民宿の主は顔色を変え、「すぐに別の部屋を用意します」と告げたあと、こう言った。
「もしかしてですが、◯◯(無人駅の事)に行きましたか?」
と聞いてきたので頷くと、やっぱりですか…と言ったあと、部屋に入る前に振りかけてくださいと言って塩を渡してきた。
Rさんたちは「それって、どういうことなんですか?」と詰め寄ったが、民宿の主は申し訳なさそうにしながらこう説明した。
「昔からあの無人駅には何かがいると言われていて、夜になると目についた人についてくることがあるんです。
塩で払えば大丈夫だと思いますが、あまり気にしすぎないようにしてください」
不安を拭えないままRさんたちは用意された部屋に戻り、塩を振りかけて眠ることにした。
だが眠れるはずもなく、互いに小声で話しながら夜が明けるのを待った。
朝になり外が明るくなったことでようやく心が落ち着き、Rさんたちは荷物をまとめて急いで民宿を出発した。
帰りの道中、無人駅で撮った写真を確認していると、最後の一枚に不自然なものが写っていた。
それは朽ちたホームの柱の隙間からのぞく、小さな子供の顔だった。