怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

山小屋のドアを開けようとするもの

大学時代の友人たちと、山奥の小屋に泊まった時のことだった。

 

その小屋は登山客向けに使われる簡素な造りで、水道や電気は通っていたが、周囲には他の建物はなく、夜になると街灯の明かりすら届かない。

食事を済ませた後、俺たちはランタンの灯りを頼りにトランプをして過ごし、夜が更けるとそれぞれ寝袋に潜り込んだ。

 

どれくらい眠っただろうか。

ふと目を覚ますと、ザッ…ザッ… と、誰かが小屋の周りを歩いている音が聞こえた。

「…誰か起きてるのか?」

ぼんやりした頭で呟くが返事はない。

同じ部屋で寝ている友人たちを見ると、全員寝息を立てている。

じゃあ誰の足音だ?

寒気が背筋を駆け上がる。

音はゆっくりとした速度で、小屋を回り込むように移動している。

野生動物かもしれないと考え、そっと布団をめくって起き上がる。

だがすぐに動くのを止めた。

窓の外、闇の中に何かが立っているのが見えたからだ。

はっきりとは分からない。

人のようにも見えるし、ただの木の影かもしれない。

でも直感で「見てはいけない」と思った。

 

俺は布団に潜り息を殺す。

すると――

カリ…カリ…

何かがドアを引っ掻く音がした。

鍵は閉めてあるが、ドアノブを回そうとするかのように、ガチャッ、ガチャッ と音が響く。

友人たちは誰も起きない。

心臓の音がうるさいほど鳴っていた。

どのくらい続いただろうか。

気が付けば音は止んでいた。

恐る恐る布団から顔を出し、時計を見ると朝の5時を回っている。

もう外は薄明るい。

静かになったことを確認し、意を決して戸を開けた。

――そこには、何の痕跡もなかった。