真夏の夜、Sさんたち四人は地元の山奥にある廃駅へ向かった。
その駅は数十年前に廃線となり、今では線路が草に埋もれ駅舎も朽ち果てている。
夜になると肝試しに訪れる者もいるが、あまりの不気味さにすぐに引き返すのだという。
「本当に出るのか確かめてみようぜ」
好奇心旺盛なTさんの提案で、Sさんたちは懐中電灯を片手にホームの脇にある駅舎へ足を踏み入れた。
駅舎の中は荒れ果て崩れかけたベンチや、割れたガラスが散らばっている。
奥の改札口を通り抜けようとした瞬間――
バタンッ!!
突然、背後でドアが勢いよく閉まった。
「うわっ!」
驚いて振り返ると入ってきたドアが閉まっている。
Kさんが慌てて駆け寄り、ドアを開けてみると――問題なく開いた。
「風か?」
そう呟きながらも胸騒ぎを覚えつつ改札を抜け、薄暗いホームへと足を進める。
その時だった。
――ヒソヒソ……
誰かが小声で話している。
耳を澄ますとそれは線路の向こう側、駅舎の2階から聞こえてきた。
廃駅に2階があることは知っていたが、今は立入禁止になっているはず。
Sさんたちは意を決して2階へ続く階段を上ることにした。
階段は朽ちかけていたが慎重に進み、廊下の奥にある最後の部屋へと辿り着いた。
声は確かにその中から聞こえてくる。
Sさんがそっとドアノブに手をかけ、ゆっくりと押し開けた――
ドンッ!!!
轟音が響き渡り懐中電灯の光が跳ねる。
と同時に、部屋の奥にいくつもの黒い影が見えた。
影は何かを訴えるように揺らめき、次の瞬間、窓の外へと消えていった。
慌てて窓際へ駆け寄るがそこに人が立てる足場などない。
あるのは真っ暗な線路だけだった。
「…ここ、本当にヤバいかもな」
誰ともなく呟いたその言葉を最後に、Sさんたちは駅舎を後にした。