Oさんが体験した話。
転勤を機にOさんは都内のワンルームに引っ越した。
駅からは少し遠いがオートロックつき、室内も清潔で申し分ない。
ただ一つ入居初日から妙な違和感があった。
それはどこか“空気が澱んでいる”という感覚。
窓もドアも開け放って換気してもなぜか息苦しい。
「きっと引っ越し疲れだろう」と思い直し、その晩は早めに寝ることにした。
深夜、玄関の方から「カチャ…」という音が聞こえた。
眠気を押しながら耳を澄ますと、さらに「ギィィ…」と、ドアがゆっくり開く音が続いた。
Oさんは飛び起き、足音を立てないよう廊下を確認する。
しかし他に音は聞こえない為、スマホを片手に寝間着のまま廊下に出て、チェーンを確認する。
…外れていない。
念のため鍵もチェックするがきちんと掛かっている。
「いったい何が鳴ったんだ?」
不安になったが玄関には人の気配も足跡もない。
音の正体も分からぬまま、その夜は電気をつけて眠った。
次の日から鏡に違和感を覚えるようになった。
洗面台の鏡、姿見、クローゼットの小さな化粧鏡――どれもよく見ると“自分以外の誰か”の輪郭が、後ろにうっすら浮かんでいる。
曇りか汚れだという事にし、気にしないようにする事にした。
数日後、会社から帰宅してから洗面台で顔を洗っていると…鏡に写る自分の肩に、誰かの手がしっかりと乗っていたそうだ。