怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

誰かがいる電話ボックス

Tさんが中学生だった頃に体験した話。

 

学校からの帰り道、通学路の途中には小さな公園があり、その一角にガラス張りの電話ボックスがぽつんと建っていた。

当時はまだ携帯を持っている子はほとんどいなくて、電話ボックスもそこそこ使われていた。

でもその電話ボックスだけは、なぜかいつも空気が重かった。

曇ったガラス、誰かの指で書かれたような消えかけた文字、そして中に入ると、ひんやりとした湿気が肌にまとわりつく。

 

ある日の放課後。

友達と別れた帰り道、Tさんはふとした悪戯心でその電話ボックスに入ってみた。

誰もいないのを確かめてから受話器を取る。

ツー、ツー――の音が鳴るはずだった。

けれど耳に届いたのは違った。

女の子が泣いているような、かすかなすすり声。

電話の向こうから微かに響くその音に、背中がぞくりとした。

驚いて受話器を戻そうとしたそのとき――

「なんで置いて行っちゃったの?」

声は幼く、怨みよりも寂しさがにじんでいた。

Tさんは慌てて受話器を戻し、扉を開けて外へ飛び出した。

その日は走って家まで帰ったという。

 

それからというもの、Tさんは電話ボックスの前を通るたび、なぜか誰かが中に立っている気配を感じるようになった。

夜にはとくにその感覚が強く、薄暗い街灯の下、ぼんやりとした人影がガラス越しに映ることもあった。

 

数年後。

Tさんがその道を久しぶりに通ったとき、あの電話ボックスはすでに撤去されていた。

だが不思議なことにその場所の近くを通ると、誰かの視線を感じるのだという。

 

まるでまだそこに置いて行かれた誰かが、立ち続けているかのように――。