怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

何かが出てくる旧校舎

Sさんから聞いた話。

 

Sさんが通っていた中学校には、すでに使われていない旧校舎があった。

今では扉も錆びつき、廊下にはホコリが積もっている。

けれど文化祭の準備期間中だけは、道具置き場として一部の教室が解放されることがある。

その年の文化祭前、Sさんたちのクラスも旧校舎の教室を一時的に使うことになった。

掃除と荷運びのため、何人かの生徒が旧校舎へ行くことになり、Sさんもそのうちの一人だった。

 

古い廊下に足を踏み入れた瞬間から、空気の重たさを感じたという。

窓から差し込む夕陽の赤が、廊下をぼんやりと染めていた。

──その日は特に何事もなかった。

 

けれど翌日の放課後。

忘れ物を取りにSさんは、一人で再び旧校舎へ向かうことになった。

もう使用は終わっており、扉にはしっかりと鍵がかけられていた。

だが――そのときだった。

「…カチャ…カチャカチャ…」

誰もいないはずの校舎の中から、微かな鍵の音が聞こえてきた。

最初は風の音かと思ったが、はっきりとした金属音だった。

耳を澄ませばそれは廊下の奥から次々と響いてくる。

「カチャ…カチャ…ガチャッ」

扉の閉まったはずの教室のドアが、一つずつ開いていく音。

それはまるで誰かが順に鍵を開け、自分の方へ近づいてきているかのようだった。

ぞわりと背筋を寒気が走った。

次の瞬間――

「ガチャッ!」

自分のすぐ近くのドアが開いた。

その瞬間、Sさんは反射的に走って逃げ出した。

しかし背後でガラガラっと開く音。

続いて足音と、追ってくる何かの存在を確かに感じた。

 

下駄箱近くに来たとき「ドコイクノ」と背後で低くくぐもった声がした。

そして「ガシッ」と何かに肩を掴まれた。

咄嗟に振り払って走り、下駄箱の出口から外へ逃げ出したSさんは、その足で職員室に駆け込んだ。

だが先生が確認に行ったときには、旧校舎には鍵がかかっており、誰の気配もなかったという。

 

あのとき、自分が掴まれた感触は今でも肩に残っているそうだ。