怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

顔が映る額縁

これはRさんが昔、古道具屋で働いていた時のこと。

 

遺品整理の依頼で引き取った荷物の中に、木枠が黒ずんだ古い額縁があった。

中の写真はすでに抜かれており、ガラスと台紙だけが残っている。

湿気を含んだような匂いが微かに漂っていたが、Rさんはそれを丁寧に拭き取り、他の額縁と一緒に棚へ並べた。

 

ところが数日後、その額縁に異変が起きた。

他の作業をしていた同僚が、「あれ、今、人の顔が…」と額縁を見て顔をしかめる。

Rさんが確認すると、確かにうっすらと、まるでガラスに写ったかのように顔が浮かんでいた。

黒髪の女性が、どこか寂しげに目だけをこちらに向けている。

反射や映り込みでは説明のつかない位置と角度だった。

気味が悪くなり、Rさんは額縁を店の奥にある倉庫へ移した。

それでも数日経つと、また別の顔が映っていたという報告が届いた。

今度は老人のような顔で、口元が黒く、まるで煤で塗りつぶされたような輪郭をしていたという。

 

その週の土曜、ふと自室の机の上に見覚えのある額縁が置かれていた。

もちろん店から持ち帰った覚えはない。

触ってみると冷たく、ガラスの内側に何かが曇ったように残っていた。

指で拭いてみるとそれは顔だった。

額縁のガラス越しにこちらを見ている、初老の男性の顔。

慌てて額縁を紙で包み、次の日に店に持っていった。

 

その後、何者かがネットショップにその額縁を出品し、すぐに購入された。

誰が出品したのかは不明。

ログにも履歴が残っていなかった。

他の店員に聞いても分からないという。

「幽霊に売られたのかも」とRさんは苦笑いしていた。

 

後日、店のネットショップのレビューに、こんなコメントが投稿された。

「この額縁、何も入れていないのに、ガラスに時々顔が出てきます。

どういう仕掛けですか?」

返答をしようとしたが、すでにその投稿者のアカウントは削除されており、連絡も取れなくなっていた。