怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

地下鉄のミラーに映ったのは

Sさんが終電間際の地下鉄を使った時の話。

 

その晩、Sさんは仕事帰りに地下鉄に乗り込んだ。

乗客は他におらず、車内はがらんとしていた。

発車してしばらくはスマホを眺めていたが、トンネルのカーブにさしかかった時、ふと目の前にある運転席上部の防犯ミラーに目が向いた。

鏡には自分の姿が映っていた…と思ったのも束の間、その背後に誰かが立っているように見えた。

一瞬息が止まる。

後ろに人の気配などなかったはずだ。

まさか誰か乗ってきていた?それとも見落としていた?

おそるおそる振り返ったが、座席も通路も空っぽのままだった。

照明に照らされた車内には誰もいない。

だがミラーにはいた。

見間違いだと思おうとしたが、立っていたのは背の高い何か。

人の輪郭に似ているのに異様に細長く、首の角度が不自然だった。

冷や汗をかきながらも、Sさんは何もなかったように前を向き、目的の駅で降りる準備をした。

 

電車がホームに滑り込むとドアが開く。

そのとき、運転席から降りてきた運転士が彼の顔を見て、まるで地面に縛りつけられたかのように動かなくなった。

「あれ?今後ろにいた人…どこへ行ったか分かりますか?」

運転士の顔は蒼白で唇が震えていた。

Sさんは凍りついたまま振り返ったが誰もいない。

だがホームの床に、濡れたような黒っぽい足跡が、Sさんの背後から続いていた。

その足跡は裸足のように見え、奇妙な形状をしており、電車の中央まで進んだところでぷつりと消えていた。

 

Sさんは足跡をたどるように視線を動かし、最後に足跡が消えた場所のちょうど天井を見上げた。

そこには人影のようなものが、揺らめいているように見えた。

それはすぐに掻き消えたが、Sさんの背筋を凍らせるには十分だった。

運転士は小さく何かを呟いている。

聞き取れないほど小さく、不明瞭な声だった。

これはまずいと思ったSさんは、運転士さんの腕を掴んで引っ張りながら電車を出た。
その後、その駅の他の駅員を呼びに行き、しばらく落ち着くまで事務所で過ごしたそうだ。