卒業を控えたMさんは、仲間たちとの思い出を残そうと、校舎のあちこちで記念写真を撮っていた。
体育館、昇降口、屋上…どこで撮っても大切な思い出になりそうな、卒業アルバムのページを飾るのにふさわしい写真ばかりだった。
次に選んだのは、放課後にはほとんど誰もいない、静かな図書室だった。
Mさんたちは書架の間を通り抜け、窓から光が差し込む一角で写真を撮ることにした。
シャッターが切られ、デジタルカメラの画面には、いつものように楽しそうな仲間たちの姿が映し出された…はずだった。
しかし、その写真だけは明らかに様子が違っていた。
Mさんを含め、写っている全員の顔がぼやけていて、誰が誰だか判別できないほどだった。
まるで濃い靄がかかったかのように、輪郭が曖昧になっている。
「あれ?なんでこれだけこんなにボケてるんだ?」
不審に思ったMさんは、写真を拡大してみた。
すると奥の書架の隙間から、ひっそりとこちらを見つめる何かがいることに気づいた。
それは全身を真っ黒な服で覆った人物だった。
まるで影絵のようにのっぺりとした黒色で、顔の表情は一切分からない。
ただその黒い人物が、カメラのレンズを真っ直ぐに見つめていることだけは、はっきりと分かった。
Mさんは背筋が凍るような感覚に襲われた。
写真を撮った時、そんな人物がいた覚えは全くない。
図書室にはMさんたち以外、誰もいなかったはずだ。
なのにこの黒い人物は、まるで最初からそこにいたかのように、自然に、そして不気味に写真に写っていた。
Mさんはその写真をすぐに削除し、仲間にも見せないことにした。
きっとレンズの汚れか、何かの一時的な不具合だろう。
そう自分に言い聞かせた。
数日後、学校からMさんへ連絡が入った。
卒業アルバムに提出したMさんの写真データが、すべて黒く塗り潰されていた、という信じられない内容だった。
Mさんは慌てて自分のカメラを確認したが、削除したはずの図書室の写真以外は、どのデータも無事だった。
しかし、学校に提出したデータは、すべてが漆黒に染まっていたという。