Kさんが倉庫で、フォークリフト作業をしていた時の話。
それはいつもの夜間シフト中のことだった。
広い倉庫には、天井近くまで積み上げられた段ボールや、木箱を積んだパレットが所狭しと並んでいる。
フォークリフトのエンジン音だけが、静まり返った空間に響いていた。
Kさんは慣れた手つきでレバーを操作し、荷物を正確に指定された場所へと運んでいく。
その日も特に変わったことなど何もなく、淡々と作業は進んでいた。
その時だった。
すでに積み上げてあった、小さい木箱の荷物のひとつが、突然、「ドン」という音を立てて、Kさんの目の前で勝手にずれて落ちたのだ。
積み方が悪かったのか?いや、そんなはずはない。
今日のシフトで積み上げたばかりの荷物で、Kさんは自分の仕事には自信を持っていた。
フォークリフトの振動でもない。
Kさんはすぐにフォークリフトを止め、落ちた木箱に近づいた。
箱に破損はない。
しかし、どう考えても自然に落ちたとは思えないずれ方だった。
Kさんは不審に思い、すぐに監視カメラの映像を確認することにした。
倉庫内には死角がないように複数の監視カメラが設置されている。
問題の木箱が置かれていた場所の映像を巻き戻して再生すると、そこには信じられない光景が映し出されていた。
積み上げられた木箱の一つが、まるで誰かに押されたかのように、スーッと滑って落ちる瞬間が鮮明に記録されていたのだ。
しかし、そこには誰もいない。
木箱の周りには、Kさん以外に人の気配は一切なかった。
Kさんの背筋に、ぞっとするような悪寒が走った。
数日後、Kさんが再びその倉庫で作業をしていると、ふと、問題の木箱が置かれていた辺りから、かすかに「コンコン、コンコン」と、まるで手で叩くような音が聞こえてきた。
最初は気のせいかと思ったが、しばらくするとその音ははっきりと聞こえるようになった。
Kさんは耳を澄ませる。間違いなく音が聞こえる。
しかも、その音は徐々に大きくなっているような気がした。
Kさんは恐る恐る音のする方へ近づいていくと、その音は紛れもなく、以前落ちたあの木箱の中から聞こえてくるではないか。
まさか何か生き物が中にいるのか!?
Kさんはすぐに他の作業員にも声をかけた。
するとKさんだけでなく、その場にいた他の作業員たちも、その奇妙な音を聞こえるという。
誰もが顔を見合わせ、不安げな表情を浮かべている。
Kさんは上司に事の顛末を報告した。
監視カメラの映像と、現在進行形で聞こえる木箱からの音を聞かせると、上司もさすがに顔色を変えた。
何か得体の知れないものが中にいる可能性を考慮し、上司は木箱を開ける許可を出した。
ただし、中の「何か」がもし生き物で、逃げ出したり暴れたりしても大丈夫なように、メッシュパレットと呼ばれる頑丈な金網状の容器の中に入れることを指示した。
Kさんはメッシュパレットの中に問題の木箱を入れ、他の作業員たちが見守る中、恐る恐る木箱の蓋を開けてみた。
…しかし、木箱の中には何もいなかった。
空っぽなのだ。
拍子抜けするような結果に、その場にいた全員が呆然とした。
だが奇妙なことに、蓋を開ける前までずっしりと結構な重さがあったにも関わらず、空っぽになった途端、嘘のように軽くなっていたという。
一体、あの重さは何だったのか。何が入っていたのか…。
Kさんは気になり、その木箱を送ってきたところに問い合わせたが、そんな木箱は送っていないとの事だった。
その木箱は今も倉庫の片隅に置かれているが、Kさんはその木箱を見るたびに、あの日の出来事を思い出し、背後に何かの気配を感じずにはいられないそうだ。