入院中、看護師のNさんという人から聞いた話。
Nさんが夜勤中の深夜巡回をしていた時の事。
深夜1時を過ぎ、患者は皆寝たようで寝静まり返っており、病室から点滴の機械音だけが小さく聞こえている。
Nさんは患者たちの様子を確認しながら、一つ一つの部屋を巡っていく。
その日も特に変わったことはなく、いつも通りの静かな夜だった。
だが、廊下の突き当たりにある、普段は使用されていない個室の前を通り過ぎようとしたその時だった。
「ピポッ、ピポッ…」
微かに、ナースコールの電子音が聞こえた気がした。
何故ナースコールが部屋から?とNさんは思わず足を止める。
聞き間違いかと耳を澄ますが、やはり気のせいではない。
音は間違いなく、その使用されていない個室から聞こえてきた。
Nさんはゆっくりと個室のドアに手を伸ばし、静かに開けた。
部屋の中は、ひんやりとした空気が漂っていた。
窓は閉まり、カーテンもきちんと引かれている。
誰もいないはずの部屋の、真っ白なシーツが敷かれたベッドには、微かに人が寝ていたような凹みが残されていた。
Nさんは目を凝らしてその凹みを見つめる。
それはまるで、誰かがほんの数秒前までそこに横たわっていたかのような、生々しい形だった。
恐怖を感じたNさんは、すぐにその部屋を出てナースステーションへと戻った。
心臓がドクドクと音を立て、巡回を続ける気にはなれなかった。
翌朝、夜勤明けで疲れきったNさんは、どうしても気になってその部屋のカルテを調べた。
すると、その個室は数年前に亡くなった患者が使用していた部屋だということが判明した。
そしてナースコールの記録を確認すると、そこには驚くべき事実が記されていた。
ナースコールが「3回」押された履歴が残っていたのだ。
それは、丁度その患者が亡くなる直前にナースコールを押した回数と、全く同じ回数だったという。