Kさんが友人たちと5人でグループキャンプに来ていたのは、夏の終わりのことだった。
山奥のキャンプ場は、昼間は賑やかだったが、夜になると虫の鳴き声だけになる。
5人は焚き火を囲み、酒を飲みながら談笑していた。
持参した一眼レフで、キャンプの思い出にと写真を撮り始めたのは、友人のTさんだった。
焚き火を背に4人全員で肩を組み、笑顔でレンズを見た。
「はい、チーズ!」
Tさんがシャッターを切る。
すぐに撮れた写真を確認すると、妙な違和感があった。
「あれ?これ誰?」
Tさんの声に皆が覗き込む。
そこに写っていたのは、確かに5人で肩を組んで笑っている自分たちだった。
しかしその奥、ちょうど焚き火の煙が上がっているあたりに、ぼんやりとだが、もう一人、人のような影が写り込んでいる。
背丈は5人と同じくらいで、うっすらとだが男性の体格に見えた。
「誰これ?」「後ろに誰か立ってた?」
ざわつく5人。
しかし、誰も後ろに人がいた記憶はない。
「動物とかじゃないの?」「たまたま、木と影が重なっただけだろ」
そんな意見も出たが、どう見ても人の形をしている。
皆で首を傾げながらも、もう一度撮り直すことにした。
今度は全員で意識して、背景に誰もいないことを確認してからシャッターを切った。
しかし結果は同じだった。
「嘘だろ…」
今度は先ほどよりもはっきりと、もう一人の姿が写っていた。
顔は判別できないほどぼやけているが、確かに人のような、男性のようなシルエットだ。
しかも先ほどよりも少しだけ、5人に近づいているように見えた。
冗談好きのHさんが、わざとらしく明るい声で言った。
「なあ、もしかしてさ、俺たち最初から6人だったんじゃねえの?」
その言葉に一瞬、場が静まり返った。
皆の顔から笑顔が消える。
Kさんが、震える声でその静寂を破った。
「いや、6人だったとしても、俺がこれ撮ったんだぞ…。
それに今ここにいるのは、俺を入れても5人しかいないだろ…?」
そう、Kさんが写真を撮っているので、写真に写るのは4人だけのはずだった。
その瞬間、辺りは重苦しい沈黙に包まれた。
焚き火の爆ぜる音だけが、やけに大きく響く。
誰もが言葉を失った。
自分たちの隣と背後に見えない「何か」が、ずっと立っていたのかもしれない。
そう思うと、背筋が凍りつくような寒気が走った。
その夜からだった。
まず、Hさんが体調を崩した。
熱を出して、寒気がすると震えだしたのだ。
翌朝、無理をして車を運転し、近くの病院へ向かうことになった。
途中、交代で運転していたTさんも、急に吐き気を訴え始めた。
その後も次々に残りの友人たちも、原因不明の体調不良に襲われた。
頭痛や吐き気、だるさなど症状は様々だが、共通しているのは、どれも突然発症したことだった。
Kさんは、自分たちに何が起こっているのか分からず、ただただ恐ろしかった。
あのキャンプで写った「二人」の影が、何か悪いものを連れてきたのではないか。
キャンプから帰って数日後、Kさんたちは皆で地元の大きな神社に行ったそうだ。
あの夜のこと、そしてその後の体調不良を振り返り、真剣な面持ちで、これ以上悪いことが起きませんように、とお願いしたという。