怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

クローゼットの中の服

とある学校で教員をしているKさんが、学生だった頃に体験した話。

 

Kさんは地方の大学に進学するため、初めて一人暮らしをすることになった。

大学から少し離れた築年数の古いアパートの一室を借りることになったのだが、家賃が相場よりもずっと安く、広さも十分だったのでKさんは大満足だった。

部屋は日当たりもよく、静かで勉強するにはもってこいの環境。

ただ一つだけ気になったのは、備え付けのクローゼットだった。

クローゼットの扉はなぜかいつも少しだけ開いていて、閉めてもすぐにまた少し開いてしまう。

Kさんは、建付けが悪いのだろう、と特に気にせずに服をしまっていた。

 

ある日のこと、Kさんは夜遅くまで大学の図書館で勉強し、疲れて帰宅した。

部屋の電気をつけ、コートを脱ごうとした時、ふとクローゼットに目をやった。

いつも通り、扉は少し開いている。

その隙間から、何か黒いものが覗いているように見えた。

Kさんは「あれ?こんなもの入れたっけ?」と思いながら近づいて扉を大きく開けた。

 

そこに吊るされていたのは、見覚えのない真っ黒なワンピースだった。

Kさんは首を傾げた。

自分はこんな服は持っていないし、そもそも最近服を買った覚えもない。

もしかしたら前の住人の忘れ物だろうか、でもだとしたらなぜこんなにきれいにハンガーにかけられているのだろう、と疑問に思った。

とりあえずそのままにして、Kさんはその日は疲れていたので、シャワーを浴びてすぐに眠りについた。

 

翌朝、目が覚めて身支度をしようとクローゼットを開けると、昨日と同じ黒いワンピースが吊るされている。

Kさんはやっぱり見覚えがないなと思いながらも、特に気にせず大学へ行った。

 

そんな日が何日か続いた。

クローゼットには、いつの間にか増えている服があったり、逆に無くなっている服があったりする。

どれもKさんの持っている服とは違う、見慣れない服ばかりだった。

最初は気のせいだと思っていたKさんだったが、次第にそれが頻繁に起こるようになり、さすがに不気味に感じ始めた。

 

ある夜、Kさんが寝る前にクローゼットの扉を完全に閉めた。

ぴったりと隙間なく閉まっていることを確認し、ベッドに入った。

しかし、ふと物音で目が覚める。

時計を見ると、真夜中の3時を過ぎた頃だった。

薄暗い部屋の中、Kさんはゆっくりと目を開ける。

そして、視線は自然とクローゼットの方へと向かった。

クローゼットの扉は、やはり少しだけ開いていた。

しかし、そこから覗いているのは、昨日までの見慣れない服ではなかった。

 

まるで、誰かの視線がそこからこちらを覗いているような、そんな気がした。