怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

谷底に向かって叫ぶ女性

大学生のSさんから聞いた話。

 

その日、Sさんは数人の友人と連れだって、比較的気軽なハイキングコースとして知られる山を訪れていた。

都会の騒がしさから離れ、心地よい風と鳥のさえずりを楽しみながら、彼らは山頂を目指して歩いていた。

他愛もない話で盛り上がりながら、道中も楽しく過ごしていたという。

 

山頂に到着すると、眼下には壮大な景色が広がっていた。

友人たちは各々スマートフォンを取り出し、写真撮影に夢中になっていた。

Sさんも景色を眺めながら、ふと、ある一点に目を奪われた。

そこは崖に近い少し開けた場所だった。

そこに一人、ぽつんと立つ女性の姿が見えた。

彼女はまるで何かに取り憑かれたように、ただじっと谷底を見下ろしていた。

その女性の様子が、どこか異様に感じられたその時だった。

「あなたあああああっ!」

甲高く、しかしどこか響かない、そんな奇妙な女性の叫び声が聞こえた。

彼女は両手を口元に当てて、何かを叫び続けているようだったが、その声は谷の底に吸い込まれるかのように、途中で途切れて消えてしまう。

 

Sさんは、慌てて女性の元へと駆け寄った。

「どうしました!?大丈夫ですか!?」

Sさんのただならぬ様子に、友人たちも異変を察知した。

「どうした!?何かあったのか!?」

と焦った顔でSさんのところに急いで向かってくる。

まさか旦那さんが谷底に落ちたのか!?と、彼女の視線の先を辿るように谷底を覗き込んだ。

しかし、そこには特に人が落ちている様子もなく、ただ静かな谷底が広がっているだけ。

「誰もいないようですけど…」

Sさんがそう言って、再び女性に声をかけようと顔を上げたその時だった。

振り返った視線の先には誰もいない。

さっきまでそこに立っていたはずの女性の姿が、忽然と消えていたのだ。

周りにはびっくりしてやってきた友人たちだけ。

Sさんは友人たちに、さっきまでここに女性いたよね?と聞いてみたが、Sさん以外誰もいなかったよと言っていた。

 

Sさんは背筋が凍るような感覚に襲われた。

忽然と消えた女性…。Sさんは急に怖くなり、友人たちを急かして山を降りたそうだ。