怖い話と怪談の処

あなたが今読んだその話、本当に「作り話」だと言い切れますか?

登山道の脇に立つ人たち

SNSで知り合ったMさんから聞いた話。

 

お盆の時期、Mさんは趣味の登山で人気の少ない裏山へ分け入った。

この山はかつて山頂付近に小さな集落があり、お盆には里から先祖の霊を送りに来る人々が列をなしたという言い伝えがあった。

Mさんはそういう話は好きだったが、まさか自分がそれに遭遇するとは思っていなかった。

 

Mさんは山頂を目指して歩き続けた。

夕方近くになり、ふと視線を感じて立ち止まった。

道の脇に、何人かの人影が立っているように見えた。

薄暗がりの中、彼らは皆、白い着物を着て俯いている。

Mさんは最初は他の登山者かと思ったが、その静けさと、皆が同じ方向を向いている不気味さに違和感を覚えた。

声をかけようかと思ったが、なぜか喉が張り付いたように声が出なかった。

全身が粟立つような悪寒が走る。

 

彼らの傍らを通り過ぎようとした時、その中の一人がゆっくりと顔を上げた。

顔は判別できなかったが、その眼窩だけが真っ黒な穴のように見えた。

Mさんは思わず目を逸らし、足早にその場を離れた。

背後からは何の音も聞こえなかった。それが余計に不気味だった。

 

山頂に着く頃には完全に日は沈んでいた。

Mさんは慌ててテントを張り、持ってきたラジオをつけた。

ラジオからは雑音が聞こえるだけだったが、その中にごく微かに、そして連続した「ザッ、ザッ」という砂を踏みしめるような音が聞こえた。

まるで大勢の人間が、ゆっくりと歩いているような音だった。

耳を澄ますと、その音はテントの外、山頂へ続く道の方から聞こえてくるようだった。

Mさんは息を殺し、ただその音を聞いていた。

 

しばらくするとテントの入り口の生地が、外から軽く押し上げられたように揺れた。

Mさんは何事だとびっくりし、入口を見続ける。

完全に暗闇の中、テントの壁にぼんやりと影が映し出された。

それは人のような形をした影が、一つ、また一つとゆっくりと横切っていく様子だった。

Mさんのテントは一人用で、その狭い空間を何人もの影が途切れることなく通り過ぎていく。

影はただひたすらに、同じ方向へと進んでいくようだった。

 

Mさんは、その光景をただ見ていることしかできなかった。

声を出そうにも、恐怖で身動きが取れず、Mさんはただじっと夜が明けるのを待った。

影の列は夜が深まるにつれて数が増え、テントの周りをぐるぐると回っているかのように感じられた。

その度にテントの生地が微かに揺れ、Mさんはまるで自分もその列に加わらされているかのような錯覚に陥った。

 

夜明けとともに、影も音もぴたりと消えた。

Mさんは慌ててテントをたたみ、一目散に山を下りた。

下山中、再びあの人影を見た場所を通りかかったが、当然そこには誰もいなかった。

だがその道には、無数の小さな窪みが点々と続いていた。