
大学生のRさんたちは、夏休みを利用して友人たちと旅行に出かけた。
目的地は、静かな山奥にひっそりと佇む山小屋だった。
インターネットで写真を見た限りでは、古民家風の趣がある、可愛らしい山小屋に見えた。
しかし実際に到着してみると、想像以上に年季が入った建物で、どこかひんやりとした空気が漂っていた。
管理人らしき人物は、山小屋に泊まる時の注意事項や物の使い方、鍵は麓の管理人室に持ってきてくれという説明を終えると、鍵を渡してすぐに姿を消してしまった。
どうやら山小屋には、Rさんたち以外に誰もいないようだった。
部屋に入り、各自荷物を整理し始めた時だった。
Rさんが窓際の棚にリュックを置こうとすると、その隅に見慣れないものが目に入った。
古びた登山靴だ。泥で汚れていて、使い込まれているのがわかる。
一体誰のものだろうか。
管理人からは何も聞いていなかったため、Rさんは少し不審に思ったが、特に気にすることなく、早速散策に出かけたりして楽しんだ。
夜になり夕飯を食べ、おしゃべりをしていたのだが、その日は疲れていたこともあり、早々に眠りについた。
夜中、Rさんは何となく寝苦しさを感じて目を覚ました。
部屋は真っ暗で、時計を見ると深夜2時を過ぎたところだった。
寝返りを打ち、再び眠ろうとしたその時、ふと部屋の真ん中に何かがあるような気配を感じたが、寝向けてに負けて寝てしまった。
翌朝、Rさんがまだ寝ていると、隣で寝ていた友人が青い顔をしてRさんを揺り起こした。
「ねぇ、R…。昨日の夜、見たの」
友人の顔は血の気が引いていて、明らかに怯えている。
Rさんがどうしたのかと聞くと、友人は震える声で話し始めた。
「夜中に足音で目が覚めたら、白くて靄のような半透明の人が部屋を歩いていたの…。
板の床をぺタぺタって…」
友人の言葉に、Rさんの背筋に冷たいものが走った。
昨夜感じたあの気配。まさか、それは…。
Rさんたちは言葉を失った。
そして、ふと部屋の真ん中に目をやると、昨日部屋の隅にあったはずの古びた登山靴が、一足ずつきれいに並んで、部屋の中央に移動していたのだ。
まるで誰かがそこまで履いてきて、脱いだかのように。
恐怖は頂点に達した。
二泊三日の予定だったが、Rさんたちは急いで荷物をまとめ、山小屋を飛び出した。
一目散に山を下り、麓にある管理人の家を訪ねた。
Rさんたちが理由を話すと、管理人は特に何も言わず、ただ静かに頷くだけだった。
理由を聞いても何も話してくれず、一泊二日分だけの料金にしてくれたという。