怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

山道の赤黒い背中

登山が趣味のOさんが、休日を利用して一人で近郊の山へ出かけた時の事。

 

その日は天気もよく、山頂からの景色を楽しんだあと、ゆっくりと下山していた。

だが、夕暮れの山は想像以上に早く影を落とし、木々の間は次第に薄暗さを増していく。

足元に気をつけながら歩いていると、前方に人影が見えた。

同じく下山中の登山者らしい。

しかし、その背中にOさんは違和感を覚えた。

赤黒い色が広がっているのだ。

汗でシャツが濡れているにしては、不自然に背中全体がじっとりと染まっていた。

しかも輪郭が人の体に沿っていない。

肩から腰にかけて、何かがまとわりついているように形が歪んでいた。

「怪我でもしているのだろうか…」

そう思い、声をかけようと口を開きかけた瞬間、その人影はふらりと脇の木立の中へと進んだ。

しかしそこに道はない。

急な斜面と茂みしかないはずだった。

慌ててOさんは駆け寄り覗き込んだ。

…だが誰の姿もなかった。

風が木の葉を揺らす音だけが耳に届く。

Oさんは立ち尽くした。

あの背中は、確かに自分の数メートル先を歩いていたのに。

赤黒く濡れた布のようなものが、ゆらりと人影にまとわりついていた感触まで、目に焼き付いている。

 

その後、どうにか無事に下山したものの、Oさんは振り返ることを何度も繰り返してしまった。

木々の間から、またあの赤い背中が現れるのではないか、と恐ろしくて仕方がなかったのだ。

以来、Oさんは夕暮れの下山を避けるようになったという。

あの時の「赤黒い背中」が本当に人だったのか、それとも山に潜む何かだったのか…今も答えは出ていない。