怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

海辺のトンネル

Kさんが友人たちと海沿いをドライブした帰り道のこと。

 

夜の海岸線は外灯も少なく、波の音だけが遠くから聞こえてくる。

しばらく進むと、古びたコンクリートのトンネルが現れた。

海辺特有の潮風で壁は黒ずみ、どこか湿っているように見えた。

「なんか雰囲気あるな…」

そう思いながらKさんは減速し、車のライトを頼りにトンネルへと入った。

 

トンネルの中は、ライトに照らされた部分以外は完全な闇。

路面は濡れていて、タイヤが水を踏む音が響く。

そのときだった。

ライトの光がトンネルのちょうど真ん中あたりを照らした瞬間。

壁に何か黒いものが張りついているのが見えた。

それは人の形でも動物の形でもなく、溶けたアスファルトの塊のように不定形で、ぬらりとした光沢を放っている。

「え…?」

目を凝らした途端、その塊がゆっくりと這うように動いた。

壁を伝いこちらに背を向けるようにして、音もなく形を変えている。

 

Kさんは無意識にアクセルを踏んだ。

車がその横を通り抜ける、一瞬。

助手席側の窓に目が映った。

塊の中にぽっかりと二つの穴が開き、そこから光のない視線だけがこちらを見ていた。

背筋に氷が走る。

視界の端でその目がすっと沈むのが見えた。

振り返る勇気はなく、そのままトンネルを抜け、しばらく無言でハンドルを握りしめていた。