怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

山の中腹でみた群れ

Tさんは夜明け頃、人気のない山を一人で登っていた。

ライトの光だけを頼りに、霧の濃い登山道を進む。

山の中腹付近に差しかかったとき、異様なものを見た。

前方の霧の中に、黒い塊がいくつもいる。最初は鹿の群れかと思ったが、足音がしない。

風もないのに揺れながら、塊はぬるりとこちらへ向かっていた。

不審に思いライトを当てた瞬間、息が詰まった。

塊の中に、無数の目のようなものが並んでいる。だがその目は光を返さない。

濁った穴がぽっかりと開いているだけのように見えた。

 

Tさんが立ち止まると、塊も動きを止めた。

恐怖で足を動かした瞬間、塊もゆっくりと付いてくる。

一定の距離を保ちながら、音ひとつ立てずに。

 

頂上へ登るのを諦めてすぐに下山する事にしたのだが、途中で振り返ってみると、霧の向こうに黒い影がついてきている。

怖くなり走り出したいが、途中で足をすべらせると余計に危ないため、早足で降りていく。

どのくらい経ったのか分からないが、やっとの事で登山口に到達し、後ろを振り返ると霧がざわりと揺れたという。