怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

暗がりに立つ黒い影

Kさんが友人たちと、山中のキャンプ場を使っていた時の事。

 

その夜は10月の末で冷え込みが強く、皆で焚き火を囲んで談笑していた。

火の爆ぜる音と虫の声が混ざり合い、酒と笑い声で場は和んでいた。

だが、Kさんはふと違和感を覚えた。

焚き火の炎の奥、暗がりの向こうに黒い影が立っているのが見えたのだ。

それは人の形をしていたが、顔がまるで削ぎ落とされたように何もなく、ただ黒い輪郭だけが揺れる炎に浮かんでいた。

 

最初は仲間の誰かが驚かそうと、そこに立っているのかと思った。

しかし声をかけても返事はなく、ほかの友人たちは相変わらず火を囲んで話し込んでいる。

どうやら誰もその存在に気づいていないらしい。

目を凝らすと、影の足元が妙に不自然だった。

地面に立っているはずなのに、膝から下が土に沈み込んでいるように見える。

しかも影は少しずつ近づいてきていた。

一歩一歩ではなく、炎が揺れるたびに影の揺らめきに合わせ、じわりと距離を詰めてくるのだ。

 

Kさんはただ焚き火から目を逸らさず、影の動きを見続けていた。

炎が大きくはぜた瞬間、その黒い人型は焚き火のすぐ手前までにじり寄っていた。

びっくりして思わず立ち上がったKさんに、友人たちは驚いた様子で「どうした?」と声をかけた。

友人たちの方を向いた後、もう一度その事を言おうと振り返ったとき、そこにはもう何もいなかった。

 

翌朝、焚き火跡の灰を片付けていたときのこと。

Kさんは灰の中央に、足跡のような窪みが残っているのを見つけた。

それは土に深く沈んだようにえぐれていたという。