
これは、とある怪談系ユーチューバー、Sさんが学生だった頃の話。
Sさんは、いわゆる心霊スポット巡りが趣味のグループに所属していた。
その日は友人たちと共に、廃れた温泉旅館へと向かっていた。
その旅館は過去に幾度も事件が起きていて、曰くつきの場所として知られている。
入り口は封鎖され、窓ガラスもほとんど割れていた。
埃とカビの匂いが混じり合う空気の中、Sさんたちは懐中電灯を頼りに奥へと進んでいく。
動画の撮影もしていた。
2階に上がったとき、Sさんは廊下の突き当たりに、誰かの人影が立っているのを見た。
一瞬だけ、誰かが自分たちを見ているような気がした。
Sさんは「誰かいるぞ!」と叫んだ。
しかし、他の友人たちは誰も気づいていなかった。
懐中電灯の光を向けても、そこには何もいない。
懐中電灯の光で出来た影だろうという事になり、そのまま奥へ進んで行った。
やがて奥まで辿り着いた為、そのうちの一つの部屋に入った。
部屋の中には古い鏡台が残されていおり、鏡は埃をかぶっていてほとんど何も映らなかった。
Sさんが鏡台を撮影しようとカメラを構えた時、鏡台の鏡に一瞬だけ何かが映った。
それは真っ黒な人影なのだが、その人影の隣に白い服を着た女の姿がある。
「え!?なんかいる!」
Sさんが叫んだ。
「どうしたんだよS!」
「何か見えたのか?」
友人たちが慌ててSさんに駆け寄り、鏡を覗き込む。
しかし、そこには何も映っていない。
女の姿はSさんの後ろから、鏡台を撮影しているSさんたちの方をじっと見ていた。
Sさんが急いで背後を振り返るが何もいない。
再び鏡を見てみたが、そこには何も映っていなかった。
その後何事も起きなかった為、Sさんの家に集まっていた。
廃旅館で撮った動画を鑑賞するためだ。
飲み物とスナックを広げ、軽い気持ちで再生ボタンを押した。
部屋に入り、鏡台を撮影した時のこと。
Sさんはゾッとした。
「おい、これ見てみろ…」
Sの声に友人たちも画面に目を凝らす。
動画の画面には、Sさんたちと一緒に部屋に入っていく、黒い人影がはっきりと映っていたのだ。
「うわっ!まじかよ!」
「俺たち、気づかなかったぞ…」
友人たちの間に緊張が走る。
次の瞬間、Sさんと友人たちは目を見開いた。
動画は、Sさんが鏡台を撮影しようとカメラを構える場面に移っていた。
その画面の中、鏡台の鏡に、黒い人影と白い服を着た女の姿がはっきりと映っていた。
白い女は、カメラ目線でSたちの方をじっと見つめている。
「これヤバいって!マジもんじゃん!」
「S、これアップしようぜ!大バズり確定だろ!」
友人たちは興奮して騒ぎ始めた。
Sさんも恐怖と同時に、この動画が持つインパクトに魅せられていた。
その時だった。
「キィィィィィィィィィィィン…」
動画から耳障りなノイズ音が鳴り響き始めた。
画面が乱れ、色彩が反転したり砂嵐のようになる。
そして、プツンと真っ暗になった。
「え?何だこれ?」
Sさんがマウスを操作して、もう一度再生しようとする。
しかし、画面には「このファイルは破損しています」の文字。
何度試しても動画は再生されなかった。
バックアップもなぜかその部分だけが消えていた。