怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

押入れの中にあった手袋

この話は、Fさんが古民家を購入したときに体験した話。

 

Fさんは田舎に一軒家を買い、休日を使って改装を進めていた。

築年数は古く、あちこち傷んでいたが、それでも「自分の手で直して住む」という喜びがあった。

ある日、押入れを片付けていると、奥に赤い手袋がいくつも置かれているのを見つけた。

古びてはいたが、布ではなくゴムのような質感。

奇妙なのはどれも右手用ばかりだった。

気味が悪いと思いつつもその日は作業を終えた。

 

夜、寝る前にふと気になり押入れを覗くと、昼間に揃えて置いたはずの手袋の位置が微妙に変わっていた。

ぞっとして押入れを閉め、そのまま布団に潜り込んだ。

 

数日後、押入れを開けてみると壁に穴が開いているのを見つけた。

何だこの穴は!?と驚いて近づき、懐中電灯を照らしてみると、向こう側で赤い手袋をはめた何かがじっとこちらを見ていた。

次の瞬間、その手袋がにゅっと伸びてきてFさんの手を掴んだ。

冷たく湿った感触に心臓が跳ね上がり、必死に手を振りほどく。

押入れの襖を乱暴に閉め、しばらく動けなかった。

 

翌朝、恐る恐る押入れを開けると、穴は跡形もなく消えていた。

気のせいだったのかと自分を疑いながらも、念のためその穴があった場所に板を補強し、鉄板を打ち付けて塞いだ。

 

だがそれ以来、夜中になると押入れの中から「ゴン、ゴン」と鉄を叩くような音が響くことがあるという。