
Rさんはアウトドア好きで、次の週末にどこかで一人キャンプをしようと探していた。
ネットで検索して見つけたのは「湖畔の森キャンプ場」という施設だった。
公式らしきページには「シーズン中」と書かれており、予約不要とあったのですぐに行く事に決めた。
当日、車で現地へ向かったが、途中から様子がおかしかった。
地図に示されたルートを辿っても、キャンプ場の案内板は一枚もなく、舗装も途切れがちになる。
半信半疑で進んでいくとやがて視界が開け、そこには確かにキャンプ場らしき場所が現れた。
芝生は整備され、テント区画も整然と区切られている。
湖面が近くに広がり風景も悪くない。
だが奇妙なことに利用客の姿は一人もなく、人気も気配もない。
管理人室の小屋を探したがドアは施錠されており、窓から中を覗いても薄暗いだけで人影はなかった。
全てがセルフなのかな?と思ったRさんは、一区画を選びテントを張った。
昼間は心地よい静けさを楽しんだが、日が落ちるて夜になった頃、ふと違和感を覚えた。
隣の区画に、いつの間にか一張りのテントが立っていたのだ。
昼間の間に誰も車で入ってきた様子はなかったし、足音すら聞いていない。
「誰か来ていたのかな…」
不思議に思ったが、声をかける勇気は出なかった。
その夜は小さなざわめきのような風の音に、耳を澄ませながら眠りについた。
翌朝、外へ出ると、隣のテントは跡形もなく消えていた。
地面も芝も乱れておらず、本当にそこにあったのかどうかも分からない。
早朝に片付けて出ていったのだろうと自分に言い聞かせ、帰り支度を始めた。
帰る前に念のため管理人室をもう一度訪ねてみると、昨日とはまるで様子が違っていた。
窓ガラスは割れ、室内は埃にまみれて荒れ果てている。
崩れた棚や散乱する書類を見れば、とても昨日今日でこうなったとは思えない。
胸騒ぎを覚えたRさんは、急いでキャンプ場を後にした。
帰宅後、改めてネットで「湖畔の森キャンプ場」を検索したが、出てきたのは違うキャンプ場サイトばかり。
ブックマークを思い出し、直接アクセスする事にした。
…だがサイトにアクセスしようとすると「このサイトにアクセスできません」と表示され、存在していない事になっていたという。