怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

階下から聞こえる「ドン」という音

学生だった頃のKさんから聞いた話。

 

Kさんは大学生で、アパートの二階の角部屋に住んでいた。

大学からは少し離れていたが家賃は安く、間取りも気に入っていた。

 

ある日、授業が午前中で終わり、昼過ぎにアパートに帰った。

普段なら誰もいない静かな時間。

部屋に入り教科書をバッグから出そうとしたその時だった。

下の階から何かを叩くような音が聞こえてきた。

ドンッ、ドン、ドンッ。

規則的ではなく少し間延びしたリズム。

重い何かの塊か、土の詰まった袋を床に落としたような、鈍い音だった。

 

Kさんは引っ越してきた時、先に住んでいた友人から聞いた言葉を思い出した。

「下の部屋は、静かなおじいさんが住んでるから大丈夫だよ。

夜も静かだし安心だ」

だから最初は、その人が何か作業でもしているのだろうと思った。

だが一時間経っても音は止まらなかった。

ド、ドンッ、ドン。

ドンッ、ド、ドン。

さすがに気になり、下の階へ様子を見に行くことにした。

 

階段を降りドアの前に立つと、音は内側からはっきり聞こえていた。

ドンッ。

ドンッ。

Kさんは軽くノックした。

コンコン。

すると音はピタリと止まり、しばらく沈黙が続いた。

「あの、すみません…」

声をかけても反応はない。もう一度ノックしようとしたその時。

ドンッ。

ドアのすぐ向こうから一度だけ音が響いた。

これまでよりも明らかに近く、まるで返事をするかのように。

 

Kさんは全身が冷え、反射的に駆け上がって自分の部屋に逃げ込んだ。

ドアに鍵をかけ、壁に背をつけて息を潜めた。

しばらくすると再び下から音が続いた。

ド、ドンッ。ド、ドン…。

 

数日後、大家さんに会ったKさんは思い切って尋ねた。

「下の部屋の方、いつも何かを叩くような音がしているんですが…」

大家さんは、しばらく黙り込んだ後で言った。

「音?…あそこは空き部屋ですよ。もう何年も、誰も入ってませんから」

友人は「静かなおじいさんが住んでる」と言っていた。

大家さんに続けてその事を聞いてみると

「静かなお年寄りですか?…私が管理する前はそういう人も住んでいたようですが…もう何年も前の話なのでちょっと分からないですね」

Kさんはその場で言葉を失った。

では友人が見ていたのは…。