怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

神社の裏にある穴

Hさんがその神社跡を見つけたのは、紅葉が始まる少し前の秋だった。

地元の山をひとりで登っている途中、地図にも載っていない細い道を見つけ、興味本位で入っていったのだという。

 

やがて木々の隙間から、崩れかけた鳥居が見えた。

近づくと苔むした石段の先に小さな社のような建物があり、屋根は落ち、祠の内部も空っぽ。

誰も来ないまま何十年も放置されているようだった。

Hさんはその荒れ果てた静けさに、どこか惹かれるものを感じたらしい。

ふと裏手へ回ると、地面の斜面に黒い穴が開いていた。

人ひとりがかがめば入れるくらいの大きさで、周囲の土は不自然に新しく、掘り返されたように見えた。

 

気味は悪かったが、Hさんは懐中電灯を取り出し中を照らした。

湿った土の壁が続いており奥は見えない。

しかし、光の端に何かがかすかに反射した。

なんだろう?とライトを向ける角度を変えた瞬間。

その反射したものがゆっくりと閉じた。

まるで瞼を閉じるように。

Hさんは凍りついた。

息を呑んでライトを動かすと、再びそれは開いた。

光を受けて、確かに目の形をしていた。

土の中に埋まっているのは石ではなく、誰かの顔のように見えた。

恐怖で足がすくみ、思わず後ずさる。

だがその瞬間、穴の奥で何かがずるりと動く音がした。

土が落ち、暗闇の奥か、別の光るものが現れた。

またひとつ、そしてもうひとつ。

目がいくつも。

それらが同時にHさんの方をじっと見ている。

ただの錯覚かもしれない。

でも、そのまなざしには怒りのようなものがあった。

 

Hさんはライトを放り投げるようにして逃げ出した。

鳥居の前を転びながら走り抜け、ようやく元の登山道に戻ったとき、背後の林から風が吹いた。

その風の中に、かすかに「しゃら…しゃら…」と、土が崩れるような音が混じっていたという。