この動画は2025/12/02 17時30分から見れるようになります。
大学生のKさんとRさんが、夏休みの夜に体験した出来事。
ふたりは同じサークルで、怪談や不思議な場所を巡るのが好きだった。
その日の夜も、地元で「白狐が見守る」と噂される古い神社へ向かうことにした。
街灯の届かない道を抜け鳥居の前に立つと、あたりは音一つない感じで、夜気がじっとりと肌にまとわりついた。
参道には木々の影が落ちて、わずかな月明かりだけが石段を照らしていた。
ふたりは足元に気をつけながら歩き、ゆっくりと社へ向かっていく。
社は闇の中に静かに佇んでいて、風もなく、周囲はひっそりとした雰囲気が漂っていた。
社が見えてきた頃、社が動いた気がした。
すると社の扉が開く…何故か社の中は明るい。
最初は月の光が反射してそう見えたのだろうか?と思ったのだが、二人でそれをじっと見つめていると、奥から「白い狐?」が現れた。
それはただの野生動物とは違う雰囲気を纏っていた。
白い毛並みは月の光を受けて淡く光り、闇の中で浮かび上がって見えた。
KさんもRさんも、足が止まった。
胸がわずかにざわつくが、怖さよりも不思議さが勝っていた。
白狐は静かにふたりへ近づいてきた。
足音はせず、滑るような動きだった。
狐はふたりの目の前で止まり、ゆっくりと座った。
その黒い瞳がまっすぐにふたりを見つめている。
敵意はどこにもないが、じっと観察されているような気配があった。
しばらく見つめると、白狐は小さく首を傾げた。
まるで「何しに来たの?」とでも言っているような仕草だった。
月光の中で傾いた首の角度は妙に愛らしく、同時にどこか人ならざる雰囲気を漂わせていた。
ふたりは息を呑んだまま、ただその姿を見ていた。
白狐はしばらく動かず、やがて静かに立ち上がると、来たときと同じように社の方へ戻っていった。
闇に溶けるように姿が消えると、辺りには再び無音の中にふたりの呼吸だけが残った。
何かが起きるのではと様子を伺っていたが、変わったことは何もなく、ひっそりとした夜気だけが参道に漂っていた。
KさんとRさんは拝殿の方へ軽く向き直り、手を合わせた。
「お騒がせしました」
と心の中でそっと詫びるようにしてから、その場を離れた。
帰り道、参道には夜の闇がしっかり落ちていたが、不思議と怖さは感じなかった。
月明かりだけが石畳を淡く照らし、KさんとRさんの影を長く伸ばしていた。
しばらく歩いたところで、Rさんがぽつりと言った。
「なぁ…あれってさ、ほんとに狐だったと思う?」
Kさんは歩みを止めて振り返り、少し考えてから言った。
「いや、俺も思ってた。あれ、どう見ても…犬寄りじゃなかった?」
「だよな!?耳とか顔とか、狐っていうより白犬だよな」
Rさんがそう言うと、ふたりの間に小さな笑いがこぼれた。
笑ったあと、どちらともなく神社の方を振り返ったが、そこにはただ夜の闇が沈んでいるだけだった。
白狐に見送られたような、そんな温かな余韻だけがふたりに残っていたという。