Sさんたちが高校生の頃に見た話。
同じ高校に通っていたSさん、Tさん、Mさんの三人は、クリスマスイブの夜、友人の家で集まった帰り道だった。
住宅街はうっすらと雪が積もり、家々の窓からは暖色の明かりが漏れている。
三人は並んで歩きながら話に盛り上がってる時、Sさんが足を止めた。
TさんとMさんは、Sさんにどうした?と聞くと、指を口の前に持っていって静かにのジェスチャーをしたあと、指を指した。
視線の先、街灯の明かりが届かない路地の奥で何かが動いた気がした。
影だった。
ただの影にしては妙に大きく、地面を引きずるように伸びている。
じっと見ていると、その影はゆっくりと前に進んでいた。
やがてそれが大きな袋を引きずっているのだと分かった。
袋は明らかにプレゼント用だった。
白い布地に星や雪の模様が描かれている。
クリスマスの時期なので違和感はなかったのだが、その袋はおかしかった。
袋の口は縛られているはずなのに、中から細長いものが突き出している。
腕のようにも足のようにも見える。
しかもそれらは時々ぴくりと動いた。
三人は声も出せずその場に立ち尽くした。
逃げた方がいいと分かっているのに、足が動かなかった。
影の主が街灯の明かりの縁に差し掛かった。
ぼんやりとその姿が浮かび上がる。
人間の形をしていなかった。
胴体だけが異様に長く、肩からそのまま胴が続いているようで、首というものが存在しない。
頭があるはずの位置は暗く、形が判別できない。
手足は短く、袋を引きずるためだけに付いているように見えた。
ズズ…ズズ…。
袋が地面を擦る音が、やけに大きく響いた。
その音に合わせるように、袋の中身が動いた。
中から突き出した細長いものが、ピクンと跳ねる。
袋全体が内側から押され歪む。
その瞬間、Tさんが小さく息を吸った。
驚いたというより、呼吸を忘れていた体が、勝手に空気を求めただけだった。
影の主がゆっくりと進路を変えた。
路地の奥から出て、三人のいる道へ向かってくる。
距離が縮まっていく。
街灯の下に入っても顔は見えない。
そこにあるのは首のない長い胴体と、不自然な動きだけだった。
袋の中からまた動きがあった。
今度は二本同時に突き出し、袋の縁を掴むように外へ伸びてくる。
関節の位置がおかしく、どこまでが腕で、どこからが違うものなのか分からなかった。
その時、MさんがSさんの腕を強く掴んだ。
指が食い込むほどの力だった。
三人は同時に我に返り踵を返した。
雪で滑りそうになりながら無我夢中で走った。
背後からズズ…という音が追いかけてくる。
近づいているのか、離れているのか分からない。
振り返る余裕はなかった。
ようやく明かりの多い大通りに出て、三人は立ち止まった。
息を整えながら振り返ると、そこには何もいなかった。
一体あれは何だったのか未だに分からないという。