※この話は怖い話ではなく、感動系かもしれません。
真夜中の病室は静まり返り、かすかな機械音だけが響いている。
検査入院中のサトコは、眠れないまま天井を見つめていた。
ふと、窓辺に人影のようなものが見えた気がした。
目を凝らすとそれは確かに人の形をしていたが、夜空の明かりを背にしていたため顔はよく見えない。
サトコは恐る恐る声をかけた。
「誰?」
しかし返事はなく、人影は微動だにせず、ただじっとサトコを見つめているようだ。
サトコは恐怖を感じながらも好奇心も抑えられなかった。
ベッドから起き上がり、窓辺に近づいていく。
「あなたは誰?そこで何をしているの?」
サトコが再び問いかけても人影は何も答えない。ただサトコに近づいてくるような気配を感じた。
サトコは背筋がぞっとするような恐怖を感じ、思わず後ろに後ずさった。
すると人影はサトコの背後に回り込んだ。
サトコは心臓が早鐘のように鼓動するのを感じ、もう逃げられないと覚悟をした。
人影はサトコの背後にぴったりと寄り添い、耳元で囁いた。
「助けて…」
その声はかすれていたのだが、小さい女の子のような感じがした。
サトコは恐怖を振り払い、人影に手を伸ばした。
「大丈夫。私が出来る事なら助けてあげる」
サトコの手が人影に触れた瞬間、人影は消えてしまった。
サトコは呆然と立ち尽くしていた。何が起こったのか理解できなかった。
しかしその夜以降、サトコは奇妙な夢を見るようになった。
夢の中で、サトコは真っ暗な森の中を歩いている。そして、どこからか聞こえてくる助けを求める声に導かれるように森の奥へと進んでいく。
森の奥には古い病院があった。その中に入り、どんどんと進んで行く。
やがて一室の前に辿り着き、その部屋の中で一人の少女を見つけた。
少女は病室のベッドに横たわり苦しそうにうなっていた。
サトコは少女に駆け寄り、声をかけた。
「大丈夫?どこが痛い?」
少女はサトコを見つめ、弱々しい声で言った。
「お願い…助けて…」
サトコは少女の手を握り励ました。
「大丈夫だよ。私が助けてあげるから」
少女を助けようと必死に考えたが、何をすればいいのか分からない。
すると少女はこう言った。
「折り紙で鶴を折って…」
少女の言葉を聞いたあと、フゥっと眠りにつくような感覚になった。
目を覚ますと7時前、覚めたサトコはナースステーションに向かい、売店に折り紙が売ってるかを聞いてみた。
ありますとの事だったので売店が開く時間まで待ち、その時間に売店に向かって折り紙を買ってきた。
早速サトコは折り紙で鶴を折ろうとしたのだが折り方が分からない、折り紙の鶴の形を思い出しながら試行錯誤をしていると、サトコの前のベッドにいるおばあさんが話しかけてきた。
そこで鶴の折り方を聞き、二人で折り始めた。
そうこうしていると看護師さんがやってきた為、いつもの検査を受けつつなんとなく昨日の出来事を話した。
すると看護師さんから、吊るすための紐を持ってきてあげると言われ、早速飾る事にした。
それからまたおばあさんと折っていると、他のベッドで寝てるおばさんが私にも折らせて、と手伝ってくれた。
やがて夕方になる頃、朝の看護師さんと交代でやってきた看護師さんが
「交代の時に聞いたわよ、良かったらこれもどうぞ」
と言って折り鶴をもらった。
気がつくと折り鶴が100羽を越えていた。
そして夜、サトコが寝ていると枕元に例の少女が現れた。
少女はサトコに
「ありがとう、皆のおかげで苦しくなくなったよ」
と言ったあと、スゥーっと消えていった。